レッジョ・エミリア教育とは?教育方針の特徴からおすすめ保育園・幼稚園まで解説!
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「レッジョエミリア教育ってどのような教育法?」
「レッジョエミリア教育の具体的な方針や特徴について知りたい!」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
世界には様々な教育方法がありますが、その中の一つにレッジョエミリア教育というものがあります。
レッジョエミリア教育はレッジョアプローチとも呼ばれており、いま世界でも注目が集まっている教育法です。
こちらの記事では、レッジョエミリア教育の具体的な内容やおすすめ保育園・幼稚園について詳しく解説していきます!
レッジョエミリア教育についてざっくり説明すると
- イタリア発祥の教育法で、子ども主体の教育法
- 子供が主体的に学び、体験していくことを目的としている
- メリットは大きく、近年注目が集まっている
- 家庭でもレッジョエミリア教育を実践することができる
レッジョ・エミリア教育の主な特徴
レッジョエミリア教育は、通称レッジョ・アプローチとも呼ばれる教育法です。
こちらの記事では、レッジョエミリア教育の特徴について紹介します。
イタリア発祥の教育法
レッジョエミリア教育はイタリア発祥の教育法で、都市の名前とその位置から名前が付けられました。
なお、始まりは第二次世界大戦の終戦直後であり、レッジョエミリアの近くのヴィッラ・チェッラ村の人々が戦争で壊れた建物から、努力と苦労を重ねて学校を立て始めたのが始まりとされています。
教育家であるローリス・マラグッツィはその姿に感銘を受け、ローマで教育心理学を学んで学位を取得して学校運営の手伝いや、新しい幼児教育施設を建設しました。
その後もローリス・マラグッツィは保育施設や幼児施設を次々とオープンして、1963年には初めての公立幼児教育施設を誕生させました。
その後、レッジョエミリア市で保育施設18か所、幼児教育施設は51か所がオープンし、活発なレッジョエミリア教育がイタリア国内で展開されています。
マラグッツィの詩「100の言葉」が教育理念
レッジョエミリア教育の代表的指導者であるマラグッツィは体系的なメソッドを残しておらず、教育メソッドは存在しません。
しかし、本人が書いた詩である「100の言葉」にその理念は象徴されており、マラグッツィによる詩がレッジョエミリア教育の理念を象徴するものとされています。
なお、レッジョエミリア教育は子供の可能性を無限に伸ばすことがモットーである教育法であり「100の言葉」には過去の幼児教育とレッジョ・エミリア教育の違い記されています。
詩の中でマラグッツィは従来の幼児教育が冷たいものとして非難し、子供の多様な表現やコミュニケーションを大切にして、共に学ぶ教育アプローチを提唱しました。
画一化された教育でない
レッジョエミリア教育には体系的なメソッドが無いため、画一化された教育法ではありません。
つまり、一定の方向性を示すアプローチがあるだけで同一手法は存在しないのです。
子供の興味や関心に応じてカリキュラムの内容が変わり、各学校ごとに実施している内容はそれぞれ異なります。
また、先生たちは具体的に学習をする指示を出すのではなく、「あくまでも学習も主体は子供である」と考えられています。
このように、従来行われていた教育法とはかなりアプローチの方法が違う、革新的な教育法と言えるでしょう。
幼児が主体的に学ぶ仕組みを構築
レッジョ・アプローチでは子供の主体的な学びを重視し、個別にアプローチする手法は取らずにあくまでも集団の中での学びを重視しています。
そのため、先生たちが具体的に学習する内容を指導していく必要が無く、子供が主体となって勉強する内容を決定していきます。
先生は子供に対して提案をするものの、あくまでも子供たちと交渉した上で教育を受けるか決められます。
つまり、先生はコーチやファシリテーターとしての役割を果たし、興味の方向性を示したり子供達の成長をサポートすることになります。
いま世界で注目される教育法
レッジョ・アプローチは世界でも注目が高まっており、GoogleやDisneyの本社に併設された保育園でもその教育法が導入されています。
1991年には、幼児教育の国際的ロールモデルとして米国週刊誌「ニューズウィーク」に取り上げられたこともあり、知名度も高まりつつあります。
このような影響もあって、世界でも有数の幼児教育法として注目が非常に高まっています。
レッジョ・アプローチで核となる3つの理念
レッジョエミリア教育では「社会性」「時間」「権利」の3つに重点を置いて活動しています。
以下でそれぞれ詳しく解説していくことにしましょう。
社会性
まず最初に「社会性」としてどのようなことを念頭に置いているのかを消化しいます。
レッジョエミリア教育は4~5名のプロジェクトと呼ばれる活動を行い、これは保育士の指示を受けることなく子供たちが主体的に意見を出し合いながら行う学習を指します。
「どのような活動をするのか」「参加人数は何人にするか」「何をどのように作るか」など、プロジェクトに関することを大人を挟まずに子供だけで決定していきます。
子供たちが対等な立場でディスカッションを重ねる中で、意見を尊重する力や自分と相手の意見の相違点を認める力を身に着けることができます。
このようにして身に着く社会性は会社で新規事業を立ち上げる活動とも似ており、様々なアイデアや着想が求められる現代において強く求められるスキルであると言えるでしょう。
時間
レッジョ・エミリア教育はあらかじめ定められたカリキュラム・時間割が一切ありません。
時間制限があり「急かされる」ことによって、子供たちは本来持っている創造力などのスキルを最大限発揮することができなくなってしまいます。
このような理由もあり、プロジェクトを進める際には子供たちのペースを尊重して進めていくことを念頭に置いているのです。
権利
レッジョエミリア教育では教育内容について交渉する権利が子どもに認めており、「子供の権利」を尊重するという教育理念が世界的にも高い評価を受けています。
このように子供に「学習する主体は自分」という意識を持たせることにより、学習する意欲を高める効果も期待できます。
「先生が指示を出してそれを子供が実行する」という教育方法が中心の日本においても、徐々にレッジョ・アプローチの重要性は認められつつあります。
レッジョ・エミリア教育の主な活動の特徴
さらにレッジョ・エミリア教育の主な活動内容についてもみていくことにしましょう。
プロジェクト活動
プロジェクト活動は、子供たちが話し合いながら一つのテーマを掘り下げていく活動です。
この活動は4~5人の小グループで行われ、話し合いは保育士に加えて保護者や地域住民なども見守りながら行うことになっています。
プロジェクト活動を通して自律性や協同性を育むことが期待できます。
他の子供との意見交換を通して他者と自分の違いを認識し、その違いを受け入れることで自律性と協調性は育つことが期待できます。
レッジョ・アプローチのプロジェクト活動は子供の自律性と協調性を育てるのに最適な教育法と言われています。
ドキュメンテーション
ドキュメンテーションとは、子供の行動をスタッフが寄り添いながら記録する活動を指します。
子供の活動がパネルにまとめられて多くの人目に付くような場所に展示し、子供がそれを見て自分の活動を振り返り、次に活かすのが目的です。
ドキュメンテーションは、ビデオに録画したり文字による詳しい説明がついており、その思考や想像した記録をノートに分かりやすくスタッフがまとめています。
子供の成長を誰でも見ることができるようにすることで、子供たちの活動を分かりやすく紹介する効果も期待できるのです。
教育環境
レッジョ・アプローチでは子供が過ごす園の環境が特に重視され、環境は第3の先生と言われています。
子供には美しい環境にいる権利があると考えられており、園の様子を中からも外からも見ることができる透明性が重要視されています。
スタッフが見守る環境が整えられることで子供たちも安心して過ごせるようになり、社会との繋がりを大切にする意識も芽生えます。
なお、スタッフについては「アトリエリスタ」や「ペダゴジスタ」の専門教師が存在しており、「アトリエリスタ」はプロジェクト活動やドキュメンテーションの作成に関わる美術専門の教師を指します。
「ペダゴジスタ」は教育学の専門家であり、保育者と教育方法についてアドバイスや意見交換をするスタッフを指します。
芸術活動の自由さも売り
レッジョ・アプローチでは、教室外の身近な自然環境なども教材として取り入れられています。
具多的には、園の近くの公園で石や葉っぱを拾い集めてみたり、虫を捕まえることが挙げられます。
子供にとってはどんなものでも学びの対象となると考えており、自由に芸術活動をさせる点も大きな特徴と言えるでしょう。
よほど危険な場面でない限りは先生は子供を見守り、子供の興味や好奇心を育む活動をサポートしています。
保護者との関わり方にも特徴がある
レッジョ・アプローチは園と保護者の関わり方にも特徴があり、社会構築主義と呼ばれる考えをベースにしてます。
レッジョ・アプローチを取り入れている園では保護者との関わりを重要視しており、定期的に保護者と先生が一緒にディスカッションやミーティングを行っています。
ミーティングでは「子供達がどのようなことをに興味があり、どのような活動をしているのか」などの情報を共有し、活動内容への理解を深めています。
また、逆に保護者から園に対して提案や依頼をすることを通して、親子で一緒に生活を楽しむことができるような環境づくりに寄与しています。
このように園と保護者の交流が重要視されて、親が保育園の活動に参画する機会が他の教育よりも多い点がレッジョ・アプローチの特徴です。
モンテッソーリ教育との違いは?
レッジョエミリア教育とよく比較される教育法に、モンテッソーリ教育があります。
かなり相違点はあるので、各教育法の違いを押さえておくと参考になるでしょう。
例えば、モンテッソーリはメソッドであり、学習する内容が決められてそれに対する効果も決められている一方で、レッジョエミリア教育では子どもの興味に沿ってカリキュラムが変更していきます。
また、モンテッソーリは1人1人が個人で取り組む「お仕事」と呼ばれる個人的活動を重視する一方で、レッジョエミリア教育では社会との関わりや集団での学びが重要視されています。
以上の2点が大きな相違点となるので、自分の育児方針と考えが合致する教育法を取り入れている幼稚園を探すと良いでしょう。
レッジョ・アプローチのメリット・デメリット
ここではレッジョエミリア教育を受けることによりメリット・デメリットについていくつか紹介していきます。
良い効果が盛りだくさんのメソッド
それでは、レッジョエミリア教育を受けることによるメリットを表で見てみましょう。
メリット | 内容 |
---|---|
協調性・社会性が高まる | プロジェクトに参加することで他の子どもと話し合う機会や、仕切りのない大きな環境で相互の交流が促されるため、これらの力が高まること |
興味・関心を育てられる | 一つのテーマについて長く取り組むことで、好奇心を追求して学ぶことへの興味や関心を育むことができる |
交渉力が上がる | 学習する内容などについて、先生と交渉する場面が多くあるため、自然の自分の考えを伝える交渉力を鍛えることができる |
想像力が育つ | 自由な芸術活動を通じてインスピレーションが養われ、想像力を培うことができる |
このように、レッジョエミリア教育を受けるメリットは大きく、魅力的なポイントが多くあります。
特に、集団生活を送るうえで欠かすことができない社会性に関する力を育む機会が多く設けられているため、今後の社会を生きる上でも大きな力になることは間違いないでしょう。
問題点となる箇所も存在
協調性が育まれる点は大きな魅力ですが、逆に考えると自分のペースで活動を行いたい子供にとってはストレスになってしまうことがあります。
そのため、レッジョ・アプローチは周りと合わせるのが苦手な子供や、個性を伸ばしたいと考えている保護者にも向かない恐れがあります。
また、先生が果たす役割が大きく、子どもとの関わりはもちろん保護者や地域とも幅広く関わる必要があるため、その園によって教育内容を柔軟に変えなければなりません。
つまり、子供が順調に成長していくためには先生の力量が大きく試されることになり、先生の良し悪しによって教育効果に大きな差があることも事実なのです。
レッジョ・アプローチはメリットが多く非常に魅力的な教育法ではありますが、結局のところはどの教育法にもメリットとデメリットが存在します。
自分の子供はどちらの恩恵・弊害を被るのかをよく検討して、どちらの教育法を受けるのがベターなのかを冷静に判断しましょう。
レッジョ・エミリア教育を受けられる幼稚園・保育園
レッジョエミリア教育はイタリア発祥であり、日本では教育を受けられる機関はまだまだ少ないです。
なお、日本国内においては以下で紹介する幼稚園・保育園でレッジョエミリア教育を受けることができます
幼稚園・保育園 | 特徴 |
---|---|
北見幼稚園(北海道) | キリスト教保育・裸足保育・プロジェクト活動の3つの教育方針 |
まちの保育園/まちの子ども園(東京) | 東京都内に5か所展開する認定保育所orこども園 |
Kids Oasis(東京) | 就労の有無に関係なく入園でき、「子どものために親が預けたい場所」を目指している |
familiar PRESCHOOL(東京/兵庫) | 子どもの創造力を鍛え、自尊心と意欲を深めるためのオリジナルメソッドを導入している |
オルト保育園(東京) | 「子供から出発する保育」をモットーに、学ぶことを重視した気づきの環境を大切にしている |
Kodomo Edu international school(東京) | 探究学習では、園の仲間と一緒に主体的に取り組み、考える力をを育むことができる |
イートンハウス・インターナショナルプリスクール(東京) | 英語を第一言語として、アジア諸国で92校を運営しているインターナショナルスクール |
代沢インターナショナルスクール(東京) | 様々なグループプロジェクト活動を行い、先生や仲間との交流を通じて、広い領域に渡り学習する |
HAPPY HORIZONS(東京) | アートを中心としたプロジェクト活動を行いつつ、国語や算数知育など、遊びを取り入れながらの学習する |
東京チルドレンズガーデン(東京) | 5人の教師が年齢の異なる約20人の子どもを協力しながら同時に保育し、子ども主体の教育プログラムを実施 |
やまた幼稚園(神奈川) | 「遊びは学び」を教育方針とし、英語教育やブロックなどをつかった数的推理能力を育むことができる |
習志野台幼稚園(千葉) | 広い園庭やフリースペースを持ち、明るく開放的な施設環境が整っている |
こどもなーと(大阪) | 創作を通して「感じて、考えて、表現して、伝える」という大切な4つの力を身に着けることができる |
アトリエ REIレイ こども舎(広島) | 考える力を養う「アート保育」を通して、生きていくための重要な力と豊かな人間性を育むことができる |
以上の表のように、関東圏の家庭であればレッジョ・アプローチの恩恵を受けることができる機会は多くありますが、それ以外では受けられる機会が残念ながら少ないです。
次のトピックでは、レッジ・エミリア教育に興味のある家庭がその内容を実践できる方法を紹介していきます。
レッジョ・エミリア教育を家庭で実践する方法
子供が興味を持つ活動を一緒にやる
レッジョ・アプローチの恩恵を受けるためには、普段から子どもが興味を持てるような活動を保護者が一緒に探すことが大切です。
子供がやりたそうなことがあれば、インターネットや図書館で探してあげて、些細な活動であっても一緒に行動に移してあげるのが大切です。
例えば子供が「海の生き物を見たい」と言ってきた場合であれば、水族館に一緒に行って海の生き物を一緒に観察することが挙げられます。
このように、保護者が子ども目線になって一緒に楽しんであげることが重要なのです。
プロジェクト活動を日常に取り入れる
プロジェクト活動を家庭の活動に取り入れることも大いに有意義です。
具体的には、休日の過ごし方について、子供と親が一緒に話し合いながら決めることが考えられます。
この際には、様々な選択肢を提示してあげて実際に当事者意識をもって決めてもらうことが大切です。
また、交渉力を培うためにも、話し合う際には親と子供が同等の立場に立って話し合うと良いでしょう。
この作業を繰り返すことで自分の意見を持つことに繋がり、徐々に主体性が身に着いていくでしょう。
子どもの活動をドキュメンテーションに記録
子供の活動を動画などに記録するドキュメンテーションも大切です。
動画を撮影した後は親子で一緒に鑑賞し、動画を見ながら「どんなところが面白かったのか」などをじっくりと話し合いましょう。
また、写真や動画を撮影する際には、ありのままの姿をそのまま記録しましょう。
最後に、子供と一緒にドキュメンテーションとして記録することで、自分の活動を振り返り次に活かすことができる能力が身に着きます。
実践の前に一度読んでおきたいおすすめ本
驚くべき学びの世界~レッジョ・エミリアの幼児教育
「驚くべき学びの世界~レッジョ・エミリアの幼児教育」はレッジョ・チルドレンの公式読本です。
この本を読むことで自分の子供に対する教育の幅を広げることができ、子どもの想像力を培うことに関する意識を高めることができるはずです。
レッジョ・アプローチ 世界で最も注目される幼児教育
「レッジョ・アプローチ 世界で最も注目される幼児教育」は、レッジョ・アプローチの第一人者であるアレッサンドラ・ミラーニ氏が日本で実践した記録に基づいた本です。
レッジョ・アプローチの狙いや先生たちの意図を知ることができ、非常に有意義な内容が記されています。
レッジョ・エミリアと対話しながら:知の紡ぎ手たちの町と学校
「レッジョ・エミリアと対話しながら:知の紡ぎ手たちの町と学校」は、長年に渡ってレッジョ・アプローチを実践した記録書です。
レッジョ・アプローチに関する子供の見方や教師の子供達への関わり方など、細かいポイントまで記述されているため、非常に参考になるはずです。
レッジョエミリア教育まとめ
レッジョエミリア教育まとめ
- 画一化された教育ではなく、子どもの興味などに応じて内容は変わる
- 「社会性」「時間」「権利」の3つに重点が置かれている
- 協調性や交渉力が高まるなど、様々なメリットがある
- 家庭でもレッジョエミリア教育は実践できる
レッジョエミリア教育は子供の主体性や想像力を鍛えることができるため、近年注目が高まっています。
日本ではまだ導入事例が少ないため、家庭でレッジョ・アプローチを実践してみることをおすすめします。
子供の健やかな成長に大きく寄与してくれる魅力的な教育法なので、興味がある方はぜひレッジョエミリア教育を試してみてください!