オルタナティブスクールってどんな場所?主な教育法の種類や特徴・注意点まで解説!
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「オルタナティブスクールってどんな教育法なの?」
「通わせるメリット・デメリットを事前に知りたい!」
教育熱心な親御さまの中には、可愛い我が子に最適の環境で学ばせたいと思う方は多いでしょう。
世界には多様な教育方法があり、日本でもさまざまな教育方法を実践する教育機関が増えてきたため、どんな教育を受けさせたらいいのか迷っているという方も多いのではないでしょうか?
多様な教育機関の中で、近年オルタナティブスクールが注目を集めています。
オルタナティブスクールとは、アメリカやヨーロッパの哲学的思想から生まれた独自の教育方法を軸とし、子供の自主性や個性を尊重する教育を実施する学校です。
今回は、オルタナティブスクールで実施される教育方法の種類や特徴・注意点についてわかりやすく解説します。
オルタナティブスクールの特徴・注意点についてざっくり説明すると
- オルタナティブスクールは自主性を尊重する学校
- 教育費用が高額な点はネックポイント
- スクールの種類は豊富なので自分に合ったものを選ぶとよい
そもそもオルタナティブスクールとは
オルタナティブスクールとは、現在注目を集める教育機関で、
- オルタナティブ教育を実施
- 自主性を尊重する家庭に選ばれる
- フリースクールと異なる体制
という特徴を持った学校です。
教育法の概要やフリースクールとの違いについて、下記で詳しく解説します。
オルタナティブ教育を取り入れた学校
オルタナティブスクールで行われる教育を総称してオルタナティブ教育と言います。
この教育法は、日本の学校教育法で規定されていないメソッドのことを指し、一般的な教育法とは異なります。
「オルタナティブ」とは、
- 代替えのもの
- 既存のものにとって変わる新しいもの
などという意味に訳される言葉です。
つまりオルタナティブスクールとは、公立・私立の枠にとらわれないもうひとつの選択肢となる学校で、個人を尊重し自主性を重んじる教育を実施しています。
自主性を重んじる教育のため「教師」という位置付けの大人はおらず、大人が子供の自主性を発揮するサポート役として従事しているケースがほとんどです。
また、文科省の認める指導要領や運営体制とは異なる場合が多く、そのほとんどが学校法人ではなく「NPO法人」や「一般財団法人」という形で運営されています。
自主性を尊重したい家庭に選ばれるケースが多い
オルタナティブスクールを選ぶ家庭には、子どもの自主性を尊重したいと考えている家庭が多い特徴があります。
子供が自主的に行動し、大人はあくまでサポート役に徹する点がこのような家庭に支持される理由です。
また、一般的な学校になじめない個性の強い子供や、学校に行くのを嫌がるようになった子供が公立・私立以外の新しい選択肢として選択するケースも多くあります。
フリースクールとの違いを理解しよう
オルタナティブスクールは、日本では、厳密な定義が存在していません。
ただし、よく並べられることの多いフリースクールとは、いくつかの違いがあります。
日本におけるフリースクールとは、不登校・ひきこもりなどなんらかの理由で学校に行けなくなった子供が学校代わりに通う教育機関です。
フリースクールは民間の教育機関のため、
- 教育理念や方針が学校ごとに異なる
- 学習意欲や自主性を促すものではない
という特徴があります。
オルタナティブスクールは、
- オルタナティブ教育の方針に賛同した
- 日本の教育方針と異なる環境で育てたい
と考えたときに選択肢とされます。
フリースクールは、不登校児やなんらかの障害を抱えた子供を受け入れて学びの場を提供するものなので、明確な教育方針があるオルタナティブスクールとは違うものです。
ただし、子供の個性を重んじるというポイントは、オルタナティブスクール・フリースクールで共通しています。
オルタナティブスクールの教育法の特徴
オルタナティブスクールの教育法は、
- 子供主体の学び
- 少人数制
- 体験型学習も豊富
- 個々の意見を尊重
のような特徴があります。
自主性を尊重するための教育法を以下で詳しく解説しましょう。
子どもが主体となって学んでいく
オルタナティブスクールでは、子供が自主的に学ぼうとする姿勢を重要とし、子供が自律的に学習する支援をしています。
学習内容に関しても、教科書通りに進む日本の教育と違い、子供の興味・関心を軸にして進められ、学習プランを決めるのも子供たちです。
また、生活のルールなどに関しても、子供たちがその都度話し合って決める場面が多く見られます。
子供主体で学ぶ姿勢・アシストが整っているため、自主性を尊重したい家庭にとって魅力的です。
少人数で学習を進める
オルタナティブスクールでは、日本のような数十人単位のクラス分けはなく、少人数制です。
少人数制をとることによって、一人ひとりの子供と綿密に接することができ、個々の自主性をより尊重できる体制となっています。
また、少人数のため異年齢交流が生まれることにより、上の方との接し方・下の子供への思いやりを学ぶ機会となるのがメリットです。
体験型学習も豊富
オルタナティブスクールでは、子供の興味を引き出すため、教室内の学習だけでなく体験型学習も豊富です。
具体的には、
- 手芸・料理
- 工作・絵画
- 演劇
- 農業
- 子供自ら選択したテーマの研究
など、興味関心が高い学習テーマを中心となります。
実際に体験することで子供の興味を引き出し、子供たちが意欲的に取り組みやすいのがメリットです。
個々の個性を尊重した教育
オルタナティブスクールでは、日本教育のような画一的な集団学習ではなく、個々の個性を尊重した教育です。
一人ひとりが自ら考え、基礎学習やテーマ学習を計画するので個々の個性が潰されずに、自分のペースで学習ができます。
また、学習を強制されることなく子供の個性と自主性に委ねられるので、自然と自主的に学ぶ姿勢へも繋がるのもメリットです。
オルタナティブスクールのデメリット
これまでオルタナティブスクールの魅力を紹介してきましたが、
- 日本ではあまり普及していない
- 教育費用が高額
- 学校ごとの差異
- 上級校がない
- 不登校扱いになる可能性
などのいくつかのデメリットも把握しておかなければなりません。
以下で詳しく解説します。
日本ではまだあまり普及していない
実は、日本ではまだオルタナティブスクールがあまり普及していません。
学校数も、一般的な学校と比較するとかなり少なく、オルタナティブ教育を受けたくても通える範囲にオルタナティブスクールがないために受けられない人がたくさんいます。
このデメリットは、オルタナティブスクールを考えている家庭にとって最大のデメリットです。
教育費用が高額
オルタナティブスクールは、基本的に私立校となるため、教育費用が高額となります。
授業料を国が負担してくれる公立校と違い、学校によってかかる費用も異なるため、入学を考える場合は事前に情報を仕入れてよく検討しましょう。
学校説明会に参加する、または、すでに通わせている保護者の方に話を聞いておくといいですね。
学校ごとの教育差が大きい
オルタナティブスクールは、学校ごとの教育差が非常に大きいです。
そのため、入学前にきちんと下調べしておかないと、入学しても自分のイメージと違っていたり子供に合わなかったりして通えなくなってしまうケースがあります。
とくに、学校ごとで子供の性格に合う合わないの差が激しいので、子供の性格と校風を見極めたうえで本当に自分の子供に最適な学校なのかを判断しましょう。
上級校がついていないケースも
オルタナティブスクールは、小・中学校までしかない場合がほとんどで、高校以降の上級校がついていない点もデメリットです。
一部には高校まであるオルタナティブスクールもありますが、ほとんどの場合、高校進学以降は学校教育法で定められた高校や専門学校などに進学することとなります。
それらの学校に進学した場合、オルタナティブスクールとは全く違う環境や生活に子供が戸惑ってしまう可能性は大いにあるでしょう。
無認可校では不登校扱いになる場合も
実は、オルタナティブスクールのほとんどは法令によって学校として認可されていない無認可校で、休みなく通ったとしても不登校の扱いとなってしまいます。
オルタナティブスクールの中にはごく一部、私立学校として法令で認可されているものもあるのですが、無認可校の場合は卒業資格が得られません。
しかし、義務教育中であるならば、籍を置いている地元校と連携をとり卒業資格を得られる可能性があります。
ただし、出席扱いしてもらえるかどうかは連携する地元校の判断次第なので、あらかじめ確認が必要です。
オルタナティブスクールの種類は豊富
オルタナティブスクールで実施されるオルタナティブ教育は、さまざまな教育法を総称したもので、その教育法によってオルタナティブスクールの種類は豊富です。
オルタナティブスクールの教育方法は、
- サドベリー教育
- シュタイナー教育
- サマーヒル教育
- フレネ教育
- ドルトンプラン教育
- イエナプラン教育
などがあり、これらの違いによって教育方針や校風もさまざまに分かれます。
サドベリー教育(デモクラティック教育)
サドベリー教育(デモクラティック教育)は、1960年にアメリカで生まれた「サドベリー・バレー・スクール」の教育理念に基づいた教育方法です。
子供の自主性・個性を重視した教育法で、授業・時間割・テストなど日本の学校では当たり前の概念がありません。
また、学年・クラスも分けられておらず、異年齢の子供が一緒に過ごしています。
自主性を重んじるため、生徒が学校の運営に深く関わるのもサドベリー教育の特徴です。
サドベリー教育を受けられる教育機関は、
- 札幌サドベリースクール(北海道 札幌)
- TAMAサドベリースクールサクランボ学園(東京都 八王子市)
- 東京サドベリースクール(東京都 世田谷区)
- 三河サドベリースクール・シードーム(愛知県 岡崎市)
- 西宮サドベリースクール(兵庫県 西宮市)
などがあります。
シュタイナー教育
シュタイナー教育は、ドイツ人哲学者・シュタイナーが始めた教育法で、100年以上の歴史ある教育方法です。
シュタイナー教育は、自らの意思で行動できる子供の育成を目標としているため、急速なグローバル化に伴い日々変化していくこれからの社会を生きていく力が身につくとして需要が高まっています。
ただ知識をつけるだけでなく、芸術に触れること・運動することにもしっかり時間が割かれ、体・心・頭の3点を軸とするバランスの取れた教育法です。
また、芸術教育にはとくに力を入れていて、オイリュトミーやフルメン線描など独自の芸術活動が行われます。
シュタイナー教育が受けられる教育機関は、
- 北海道シュタイナー学園いずみの学校(北海道 虻田郡)
- シュタイナー学園(神奈川県 相模原市)
- 東京賢治シュタイナー学校(東京都 立川市)
- 横浜シュタイナー学園(神奈川県 横浜市)
- 愛知シュタイナー学園(愛知県 日進市)
などがあります。
シュタイナー教育についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も読んでみることをおすすめします。
サマーヒル教育
サマーヒル教育は、1940年にドイツ人新教育運動の教育家・ニールによって生まれた教育方法で、特徴はとにかく自由なことです。
スクールの朝は、「さあ、今日は何をしようか?」と自分のやりたいことを決めることから始まり、1日何をしていても誰からも咎められることがありません。
「子ども時代は遊びたいだけ遊ぶことが一番大切」とする創設者の信念のもとレッスンの出席も義務ではないため、木の上で本を読んでいても1日中絵を描いていてもいいとされています。
しかし、サマーヒルの掲げる自由は、自分勝手でわがままに行動する子供を容認するものではありません。
誰からも強要されることのない日々の中で自ら物事を決定する生活を営み、自分自身の人生をコントロールすることが目標です。
そのため、校則や校内でのトラブルを話し合うスクール・ミーティングなども設けられていますが、自由な校風のため協調性に欠けるというデメリットも忘れてはいけません。
サマーヒル教育を受けられる教育機関は、
- かつやま子どもの村小・中学校(福井県 勝山市)
- 南アルプス子どもの村小学校(山梨県 南アルプス市)
- きのくに子どもの村・小・中学校(和歌山県 橋本市)
- きのくに国際高等専修学校(和歌山県 橋本市)
- 北九州子どもの村小・中学校(福岡県 北九州市)
などがあります。
フレネ教育
フレネ教育は、1935年頃に南フランス山村で小学校教師・セレスタン・フレネが考案したもので、モンテッソーリやレッジョ・エミリアなどの近代的な教育法へも影響を与えた教育方法です。
フレネ教育では、これまでの押し付けられる教育ではなく、個性化・協同化の2大原理の上での子供主体となる教育を目標としています。
学習は、自ら決めた計画表に従って進め、計画表のマスを塗り潰すことで進捗度を把握させるなど個々のペースと自主性を尊重する内容です。
一方で、縦割りのクラス分けがなされ、自己評価を発表し周りからも評価してもらうといった意見交換の場も多く、協調性を学ぶ機会も多く設けられています。
フレネ教育が受けられる教育機関は、
- けやの森学園(埼玉県 狭山市)
- ジャパンフレネ(東京都 豊島区)
- 箕面こどもの森学園(大阪府 箕面市)
の3つがあります。
ドルトンプラン
ドルトンプラン教育は、1900年台初頭にアメリカの教育者・ヘレン・パーカーストによって生まれた教育方法です。
ドルトンプラン教育では、異年齢の子供たちが集まる環境で、教師が生徒一人ひとりの能力と向き合って活動内容や学習計画を練り、個々に指導していきます。
また、教師は生徒に対して、指導ではなくアドバイスを行う点もドルトンプラン教育の大きな特徴です。
ドルトンプラン教育が受けられる教育機関は、
- ドルトン東京学園 中・高等部(東京都 調布市)
- The Dalton School(東京都 渋谷区、愛知県 名古屋市)
などがあります。
イエナプラン教育
イエナプラン教育は、1930年ごろにドイツの教育学者・ペーター・ペーターセンによって生まれ、幸福度世界一の国オランダで普及している教育方法です。
自立と共生をテーマとし、自主性・協調性それぞれに働きかける独自のプログラムを実施していますが、その中でも有名なのが「ブロックアワー」でしょう。
ブロックアワーは、生徒自ら組んだ1週間の学習計画に沿って行われる個別学習の時間で、「わからないことはグループの年長者に聞く」といったルールがあり、自主性・協調性を育む仕組みになっています。
イエナプラン教育が受けられる教育機関は、
- 学校法人茂来学園 大日向小学校(長野県 南佐久郡)
- イエナプラン教育校(広島県 福山市 2022年4月開校予定)
などがあります。
その他にもオルタナティブスクールは存在
上記で紹介した教育機関以外にもオルタナティブス教育を受けられる教育機関は存在し、その中にはオルタナティブ教育を実践する一条校・フリースクールなどもあります。
また、上記で紹介したものに属さない教育法を実践する教育機関や小規模運営な機関もあり、オルタナティブ教育の需要はさらに広がりつつあるようです。
- 軽井沢風越学園(長野県 北佐久郡軽井沢町)
- グリーン・ヒルズ 小・中学校(長野県 長野市)
- 静岡あたらしい学校(静岡県 静岡市)
- 瀬戸ツクルスクール(愛知県 瀬戸市)
- オルタナティブ・スクール あいち惟の森(愛知県 名古屋市)
- NPO法人ころあい自然楽校・小学部(兵庫県 加古郡稲美町)
- ラーンネットグローバルスクール(兵庫県 神戸市)
- WING SCHOOL(熊本県 熊本市)
- 森の学校楠学園(鹿児島県 姶良市)
- 日本ベンジャミン人間性英才学校
これらの教育機関が自宅近くにある場合は、入学を検討してみるのもよいでしょう。
オルタナティブスクールを考えるタイミング
オルタナティブスクールを考えるタイミングは、特定の年齢に達したときや卒業・入学などは関係ありませんが、入学を検討すべきタイミングはあります。
具体的なタイミングは以下の通りです。
- 個性を尊重し、のびのびと育てたいと考えている
- 個性が強く、日本の普通教育が合わないと感じている
- 普通の学校に通う子供が、登校を嫌がるようになった
このような状況で、より子供に合った教育を受けさせたいと考えたときが入学検討のタイミングです。
上記のような理由で子供の進路や転校を迷っているなら、オルタナティブスクールという選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
オルタナティブスクールには、メリット・デメリット両方ありますが、まずは親が視野を広げて子供に多くの選択肢を与えていくべきです。
オルタナティブスクールの特徴・注意点についてまとめ
オルタナティブスクールの特徴・注意点についてまとめ
- オルタナティブ教育は子供の個性・自主性を尊重する教育
- 学校によって教育方法・校風・学費などが異なる
- 然るべきタイミングで入学を検討するべき
個々の自主性と個性を尊重する教育で注目が集まるオルタナティブスクールは、日本式の教育では潰されてしまいそうな個性の芽を育む新しい形の学校です。
一言にオルタナティブ教育といっても、その教育方法はいくつかあり、教育方法の違いによって独自のプログラムや校風などが異なります。
現在、日本にオルタナティブスクールはあまり多くはなく選択肢が少ないですが、子供に最適な教育を模索するなら一度視野に入れてみましょう。