フラッシュカードは幼児教育に効果あり?やり方や弊害も併せて解説!

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「フラッシュカードは幼児教育に効果があるの?」

「正しいやり方は?弊害があるって本当?」

などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。

フラッシュカードは幼児教育に用いられる手法のことで、大量の知識を暗記したり、集中力を高める目的で用いられます。

ただし、フラッシュカードには弊害もあるので、正しいやり方を知った上で行わなくてはなりません。

今回はそんなフラッシュカードは幼児教育に効果があるのかということについて、正しいやり方や弊害を含めて解説します。

これを読んで、フラッシュカードをお子さんの教育に取り入れるかを判断する上での参考にしてください。

フラッシュカードの効果についてざっくり説明すると

  • 道具や動物などの名前をたくさん覚えて物知りになれる
  • 受け身の学習なので主体性・積極性が損なわれる可能性も
  • 子供の意思を尊重し、長時間やりすぎないように注意

フラッシュカードって何?

疑問を持つ女

フラッシュカードとは、絵や言葉が書かれたカードを、カメラのフラッシュのように一瞬だけ見せて、その内容を暗記させることを試みる教材のことです。

1枚1秒以内のテンポで素早く連続的にカードを見せていくことによって、脳の発達や集中力の強化などに効果があるとされています。

幼児期には「映像記憶」の能力が存在

京都大学霊長類学研究所が行った研究によると、ヒトの幼児はごく一般的に「映像記憶」の能力を備えており、それは思春期になる頃には消えてしまうそうです。

ちなみに映像記憶とは、ある情景や事象を写真のように切り取って把握できる能力のことを指します。

これは霊長類が持つ原始的な能力であり、人間の場合は言語力の発達とともに衰えてしまいますが、大人になっても記憶力を保持し続ける人もいるようです。

そういう人たちは、車窓から一瞬見えただけの風景を言葉やスケッチで詳細に再現したり、本のとあるページを「スクリーンショット」のように暗記することができると言います。

このような背景から、幼児に備わる映像記憶の能力を活性化させようと幼児教室や塾などが主体となって広めていった教材がフラッシュカードというわけです。

フラッシュカード普及の背景を脳のメカニズムから解説

フラッシュカードが普及した背景には、それが映像記憶の活性に効果的であると考えられたからですが、その根拠は脳の「可塑性」という性質にあるとされています。以下は定義です。

「脳の可塑性とは、「発達段階の神経系が環境に応じて最適の処理システムを作り上げるために、よく使われるニューロンの回路の処理効率を高め、使われない回路の効率を下げるという現象」のことであり「発達期の脳において顕著にこの性質が観察される」 「ある科学論文の誕生」より

要するに発達期の脳は外部環境からの刺激があると、その環境に最適化するように回路の使い方を変えていく性質があるとということです。

さらにわかりやすく言うなら、フラッシュカードを何度も見せていると、幼児の脳はそれに適応するように変容していく、つまりは映像記憶の能力が高まっていくということになります。

ちなみに「可塑」とは、「形を変えられる」という意味であり、脳の形が変わっていく現象は他にも様々見られます。

例えば、幼児期に起こった事故や障害などによってある領域を損傷したとしても、他の領域によって損傷した領域の機能が代替されるというのがその好例です。

フラッシュカードの具体的なやり方

フラッシュカードの具体的なやり方は以下の通りです。

  1. 子供と親(もしくは先生)が向かい合って座る

  2. カードの束を用意し、1枚1秒以内のペースで内容を読み上げながらカードを見せる

カードを見る子供からすると、目の前で次々と映像と音声が切り替わるので、各カードの内容を把握するには、カード全体を一気に捉えるような情報処理をしないと追い付きません

フラッシュカードの訓練を続けていると、子供は自然と(無意識的に)そのような情報処理をするようになるので、映像記憶の能力を鍛えるのに効果的なのです。

フラッシュカードの効果

親指を立てる少年

ここからはフラッシュカードの具体的な効果について解説します。

大量の情報を脳に入れられる

一気に大量の情報をインプットできることが、よく語られるフラッシュカードの第一のメリットです。

なお、映像と音声の情報を同時に処理するフラッシュカードは、視覚と聴覚の二つを使って記憶していくことができるので、膨大な情報を入れてもその多くが知識として定着します。

よって、日々植物や動物、電車などの名前をたくさん覚えていくことができるので、幼いうちからかなりの物知りになれるでしょう。

通常なら記憶するまでにかなりの時間の要するようなことでもフラッシュカードなら短期間で覚えられるため、覚えておくべきことを効率的に暗記させるのには適した教材だと言えます。

実際、フラッシュカードをしている幼児の中には、大人でも難しい漢字が読めるなど普通では考えられないような能力を発揮する子も少なくありません。

集中力が向上する

フラッシュカードでは、短時間で大量のカードを見るので、全ての情報を処理するにはそれなりの集中力が必要です。

そのため、フラッシュカードを続けていれば、子供の集中力が高まるという効果も期待できます。

実際、飽きっぽかった子供が物事に集中して取り組めるようになったり、作業中にちょっかいをかけてみても、気にせず作業に没頭するようになったという声もあるので、試してみる価値はあるでしょう。

フラッシュカードなら、一回数十秒で終わるため、今は集中力がないというお子さんでも、比較的始めやすいと言えます。

少なくとも集中する習慣は付けさせられる

フラッシュカードの形式がそうさせるのか、カードを繰り出し始めると子供は不思議なほどそれをじっと凝視します

たとえそれまで落ち着きなく遊んでいた子供であっても、フラッシュカードを始めると静かに見つめることが多いです。

そのため、フラッシュカードを頻繁に行えば、少なくとも集中する習慣をつけることはできます

ただし、その集中力を他の場面でも発揮するようになるかどうかには個人差があると言えるでしょう。

フラッシュカードの弊害・危険性

指を立てる女性

通常、子供は自分の興味に従って様々なものに触れ、自然と知識を習得していきます。

しかし、フラッシュカードでは、自分の名前もはっきりわからないような時期から、親から一方的に大量の情報を与えられるので、子供の脳はイレギュラーな情報処理をしなければなりません

フラッシュカードはこのようにある種自然に反する取り組みであるため、場合によっては諸々の弊害や危険が生じる可能性があります。

なお、以下で述べる内容は医学や脳神経科学的に証明されているわけではないので、必ずしもそのような現象が起こるとは限りません。

受け身学習で自主性が失われる

先述した通り、脳には可塑性があり、よく使われる回路は活性化していき、逆に使われない回路は不活性になっていきます。

そのため、フラッシュカードで情報を大量に受容するということを続けていると、受動的な能力はどんどん高まっていく一方で、好奇心や自主性など積極的な能力が損なわれるリスクがあります

そうなれば、子供らしい活発さがなくなってしまったり、親の指示がないと動けない受け身の態度が当たり前になってしまう可能性もあるでしょう。

極端に言うなら、情報を処理することだけに長けた機械のような無機質な人格になってしまうかもしれず、大きな弊害だと言えます。

子どもがぶつぶつと独り言を言う

フラッシュカードを実践した親御さんから「子供がぶつぶつ動物の名前ばかりを呟いているので心配になる」との声が聞かれるケースもあります。

たくさん情報を処理した後なので、多少の独語は問題ないでしょうが、上記のように少し不気味さを感じるような状態ならあまりよろしくないと言えるでしょう。

また生気が見られなくなったり、子供らしさがなくなったという報告もあるので、膨大な情報を処理することで何かしらの負担がかかっている可能性は多分にあります。

フラッシュカードの弊害を回避するにはどうする?

芝生と赤ちゃん

以下ではフラッシュカードの弊害を回避するための取り組み方を紹介します。

子どもに無理をさせない

フラッシュカードは受け身の学習なので、無理に続けていると主体性や積極性を損ねてしまう可能性があります。

そのため、頻度をセーブするためにも、お子さんがやりたいと言った時だけやらせるなどのルールを設けるのが良いでしょう。

またカードの種類や方法をお子さんに選んでもらうというのもおすすめです。

このように最終決定権をお子さんに置いておけば、受け身のフラッシュカードでも一定の能動性を担保することができます。

子どもに最適な教材を選択

子供と教材にも相性があるので、全ての子供にフラッシュカードが有効はわけではありません

視覚優位の幼児であればフラッシュカードに適性があると言えますが、聴覚優位(もしくは言語優位)の子供にとってはストレスになる可能性もあります。

そのため、お子さんの性格などを考慮し、フラッシュカードが向いていないようであれば、他の教材を選択するのも良いでしょう。

またフラッシュカードを含めたいくつかの教材を試してみて、より良い教材を選択するというのもおすすめです。

長時間やりすぎないように気を付ける

脳が発達途上にある幼児期の学習は、短時間で済ませるというのが鉄則です。間違ってもやればやるほど効果は上がるなどのように考えてはいけません。

特に一度に膨大な情報を処理させるフラッシュカードは、脳への負担も大きいと考えるられるため、長時間続けるのは避けましょう。

過度に情報をインプットさせてしまうと、先ほど言及したように生気がなくなったり、機械のような無機質な感じになってしまう可能性があります。

実体験と関連付けて覚えさせる

フラッシュカードがある意味不自然な取り組みであり、一方的な情報の刷り込みであると言えるのは、そこに体験を伴わないからです。

例えば、「犬」という言葉を覚える際は、普通なら隣の家の飼い犬に触れ合うなどの体験を伴います。ふさふさな毛並みに触れたり、甲高い吠え声を聞くこともあるでしょう。

一方でフラッシュカードの場合は、親から提示される犬のイラストを見て、「いぬ」という音声を聞くだけです。この作業を淡々と続けていれば「頭がおかしくなってしまう」のも無理はありません。

そこでこの状況を解消する手立てとしておすすめしたいのが、実体験と関連させて覚えさせるということです。

具体的には顔写真を使った「ママ」「パパ」などのカードを同じ規格で作って加えるなどが良いでしょう。

また果物のカードを見せた後に一緒に果物を食べたり、動物のカードを覚えてきたら実際に動物園に行ってみることなどもおすすめです。

フラッシュカードによくある誤解も押さえよう

指差す少年

以下ではフラッシュカードに関するよくある誤解を紹介していきます。

フラッシュカードは右脳を鍛える

フラッシュカードをすれば右脳を鍛えられるというのはよく用いられる売り文句ですが、これに科学的根拠はありません。

またそもそも「右脳を鍛える」という言い方自体が、医学や脳科学的には意味が通らないと言われています。右脳は潜在意識を司る領域だからです。

ただし、右脳はイメージによる瞬間的な記憶や、膨大かつ高速な記憶処理をすることができるので、フラッシュカードをする際に右脳が用いられているのは本当だと言えます。

フラッシュカードでIQや頭がよくなる

フラッシュカードをしたからといって、IQ(知能指数)が高くなったり、頭がよくなったりすることはありません

確かにフラッシュカードは記憶力には影響を与えるまずが、知能全般に好影響があるというは飛躍のし過ぎです。

以下は学者による知能の定義の一例ですが、これを見ると記憶は知能の一部でしかないことがわかります。そのため、「フラッシュカードをすれば頭がよくなる」と言うことはできません。

  • 「言語、数、空間、記憶、推論、語の流暢さ、知覚」…アメリカの心理学者・サーストン(1887-1955)による定義
  • 「言語的知能、論理的数学的知能、空間的知能、音楽的知能、身体運動的知能、対人低知能、博物的知能、内省的知能」…アメリカの心理学者・ガードナー(1943-)による定義

また一般的にIQテストでは、言語能力と論理的・数学的な能力が試されることが多いですが、フラッシュカードでそれらの能力を明確に高めることは不可能です。

フラッシュカードでは情報が大量に詰め込まれるものの、その全てが完璧に処理されるわけではないので、言語能力や論理力が目に見えて発達することはありません

よってフラッシュカードとIQの関係も希薄だと言えます。

家庭教育の教材としては限界がある側面も

親子で勉強

フラッシュカードを家庭用の教材として活用するのには限界があります。以下ではその理由をいくつか紹介します。

読む速さと正確性の維持が困難

フラッシュカードをするには、親にある程度の技術が求められます。

具体的には繰り出すカードに合わせて音声を読み上げるという作業を、1枚1秒以内のリズミカルなペースで連続させなければなりません。

これができるようになるには、センスと慣れが必要で、下手な人がするとスピードがだんだん落ちていったり、焦って読み間違いをするなどのミスが頻発します。

十分な効果を発揮するにはかなり熟達しなければならないので、家庭で行うにはハードルが高いと言えるでしょう。

カードのクオリティが担保されていない場合も

フラッシュカードには種々の弊害もあるわけなので、規格やクオリティ、ルールなどがきちんとしていないカードを使うわけにはいきません

しかし、中にはそれらがしっかりしていない粗悪なカードもあります。そのようなカードを選んでしまえば、十分な効果は得られないでしょう。

よって出版元や監修者などを見て、十分に信頼できる教材であることを確かめてから使うべきです。

また雑誌を切り抜いたり、自分で書いたりしてカードを作るのもおすすめできません。

1対1のルールが守れないケースが存在

フラッシュカードは子供と親が1対1で行うのが原則です。親子二人きりで行うからこそ、子供はカードに没頭できますし、親は子供の集中力や疲労の度合いを具に感じとることができます

しかし、兄妹がいるような家庭では、なかなか1対1の状況を作り出すのが難しいという場合もあるでしょう。

大勢の児童がともに遊ぶ幼稚園や保育園と比べるとマシですが、同じく幼児の兄妹がいる場合は特に難しいと言えます。

1対複数人で行うのは本来の形ではないため、1対1を作れないのであれば、大勢でも遊べる教材に変更した方が良いでしょう。

おすすめフラッシュカードを一挙紹介

笑顔の赤ちゃん

以下ではおすすめのフラッシュカードをいくつか紹介します。

七田式シリーズ

フラッシュカードのメーカーとして第一におすすめしたいのは、幼児教育で有名な七田式です。

七田式は開業からずっとフラッシュカードを教材のラインナップに入れているので、七田式の看板商品の一つだと言えます。

よってクオリティの高さは申し分ないでしょう。

七田式カードフラッシュおためしセット

初めてフラッシュカードを使うという方におすすめの教材です。絵カード60枚と数字カード50枚、自作用の10枚の計120枚がセットになっています。

フラッシュカードの弊害などに不安はあるものの、興味もあるという方は、まずはこちらを試してみるのが良いでしょう。

なお、こちらは0歳から使うことができます。

七田式名所カード

ピサの斜塔やタージ・マハルなど、世界の名所に関する120枚のカードです。

各国の美しい世界遺産の写真を見ながら、その名前を覚えることができるので、世界の文化や歴史、自然などへの興味関心を高めるのに良いでしょう。

なお、対象年齢は0〜5歳です。

七田式フラッシュカード 反対語カード動詞編

漢検8級・7級に登場する対義語(動詞)48種類に関するカードです。

裏表で1セットになっており、例えば裏が「憎む」なら、表には「愛する」と書かれています。語彙力や表現力を高めさせたい方や漢字を覚えさせたい方などにおすすめです。

対象年齢は3歳上になります。

くもんのカードシリーズ

誰もが知る「公文式」からも多種類のフラッシュカードが出ています。中でも図鑑にちなんだカードのバリエーションが豊富です。

生活道具カード(くもんのせいかつ図鑑カード)

0歳以上を対象にしたカードで、テレビや椅子、コップなどの生活道具31点が収録されています。

身の回りの道具に興味を持つ良いきっかけになるでしょう。

ただし、10年以上前にできたカードなので、家電に関してはやや「時代を感じさせる」ので注意しましょう。

動物カード(くもんの自然図鑑カード)

トラやゾウ、イルカなどの動物が31種類収録されたカードで、こちらは幼児向けの教材です。

動物園にいるような身近な動物の名前を覚え、生き物や自然への興味関心を高めることができます。

なお、このカードには可愛いイラストではなく、かなりリアルな絵が描かれています

ひらがなことばカード1集

0歳から使える「ひらがなことば」40種類のカードです。

表にはそれぞれの言葉にちなんだイラストが、裏面には「ひらがなことば」が掲載されています。

身近な動物や道具への興味関心を高めたり、ひらがなを覚える良いきっかけとなるでしょう。

ドッツカードも効果抜群

ドッツカードとは表にドット(点)、裏にドットの数に対応する数字が載っているカードのことです。

フラッシュカードの要領で使えば、数の概念を理解したり、計算能力を高めるのに役立ちます

なお、商品としてはくもんの「かずカード」を使うのが良いでしょう。こちらは0歳から使用できます。

人間は0〜6歳までの間に脳の80%が完成すると言われているので、0歳からドッツカードを使えば、計算能力がかなり高い状態で小学校入学を迎えられるでしょう。

フラッシュカードの効果まとめ

フラッシュカードの効果まとめ

  • 集中力が高まるケースもある
  • 数の概念や計算を学ぶドッツカードもおすすめ
  • 生気や子供らしさが失われるという弊害もある
  • 子供に合っているかどうかもよく見極めるのが良い

フラッシュカードの効果ややり方、弊害などについて解説しました。

フラッシュカードは膨大な記憶の定着や集中力の向上に効果があると言われていますが、主体性が損なわれたり、生気や子供らしさがなくなる可能性があるという弊害も存在します。

大量の情報を一方的に刷り込むような方法であるため、無理にやらせるのは禁物であり、子供の意思を尊重し、やるとしても短時間にとどめるのが良いでしょう。

また子供によって向き・不向きもあるので、フラッシュカードとの相性が良くないと感じる場合は他の教材を探すのもおすすめです。

以上を参考に、フラッシュカードをお子さんの教育に取り入れるかどうかを考えてみてください。