酸性水溶液の特徴は?中性やアルカリ性の物質と比較しながら種類や見分け方を解説!
更新
「酸性水溶液にはどんな特徴があるの?」
「中性やアルカリ性とどうやって見分けるの?」
などと疑問を感じている方も多いでしょう。一口に酸性といってもいろいろな種類・物質があり、性質や特徴も違います。
酸性水溶液はどんな物質があるのか、種類や見分け方も詳しく知っておきたいものです。
この記事では、酸性水溶液について、中性・アルカリ性の物質と比較しながら、特徴と種類や見分け方を解説します。
この記事をご覧いただけば、酸性水溶液の特徴や中性・アルカリ性の水溶液との見分け方がよく分かります。
酸性水溶液の特徴についてざっくり説明すると
- 酸性の水溶液の主な特徴は水に溶かすと水素イオンを生じること
- 酸性の中にも強い酸性と弱い酸性が存在する
- 中性・アルカリ性の水溶液と見分け方も大事
酸性の水溶液の特徴は?
酸性の水溶液には、酸性特有の性質・特徴があります。
まずは代表的な酸性の水溶液の特徴から見ていきましょう。
水に溶かすと水素イオンを生じる
酸性の水溶液を水に溶かすと水素イオン(H+)が発生します。
酸性の水溶液はpHが7よりも小さい水溶液です。pHは水溶液の性質、つまり酸性・アルカリ性の程度を水素イオンの濃さで表す単位です。
pHは0から14まであります。pH7が中央値で中性、それよりも小さければ小さいほど強い酸性です。逆にpH7より大きいほどアルカリ性が強くなります。
その他の特徴は?
酸性の水溶液には他にもいくつかの特徴があります。覚えておくと役に立ちますので、簡単にまとめておきましょう。
- なめると酸っぱい
- 青色リトマス紙が赤色になる(赤色リトマス紙は変わらない)
- 緑色のBTB溶液が黄色になる
- マグネシウムなどの金属と混ぜると水素(H2)が発生する
- 電流を通す
- フェノールフタレイン溶液には反応しない
参考:品木ダム水質管理所
酸性の水溶液は、名前が「○○酸」というように、「酸」という字が含まれているのも分かりやすい特徴です。ただ「水酸化ナトリウム水溶液」などのように、「酸」が入っていても「水酸化○○」と使われているときは意味が違い、アルカリ性になります。
強い酸性の溶液や物質
同じ酸性でも、強い酸性・弱い酸性があります。ここでは強い酸性の溶液や物質について具体例を説明します。
塩酸
塩酸は中学受験で出題されることが多いので、性質・特徴をしっかり覚えましょう。
塩酸は、塩化水素の水溶液です。特徴は、無色透明で刺激臭があることです。また腐食性が強く、人体に付着すると炎症を起こします。加熱すると、水に溶けていた塩化水素が気体となって発生します。
塩化水素は、水に溶けやすく、空気より重い気体です。ですから、塩化水素を実験で発生させて集めたいときは下方置換法を使います。
気体の塩化水素も刺激臭と強い腐食性があり、人体に有害です。また、塩酸自体には爆発性・引火性はありませんが、金属を腐食して爆発を起すことがありますので注意が必要です。
硫酸
硫酸も、中学受験でよく出る液体です。無色で臭いもしません。
濃い硫酸に水を加えると激しく反応して発熱し、容器が壊れることもあり危険です。濃硫酸を薄めるときは、水を加えるのではなく、容器の水をかくはんしながら濃硫酸を少しずつ注ぎましょう。
もし実験で濃硫酸に水を加えるときは、身辺の安全対策を徹底して、ごく少量をゆっくり落とすなどの注意が必要です。
硝酸
硝酸も強酸性の液体です。高校受験で出題されますが、中学受験ではあまり出題されません。無色ですが、日光や熱が加わると黄褐色になります。
硝酸には濃硝酸と希硝酸があります。どちらも銀(Ag)や銅(Cu)を溶かしてしまう強い酸化力があるのが特徴です。
金属を溶かすときに、希硝酸から一酸化窒素(NO)、濃硝酸から二酸化窒素(NO2)が発生します。
ただ、濃硝酸に、鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・アルミニウム(Al)・クロム(Cr)・コバルト(Co)を入れても、表面に酸化被膜ができるだけで溶けません。この状態を不動態といいます。
弱い酸性の液体や物質
弱い酸性の液体や物質は、日常生活でもよく使うものです。
ここでは、酢酸と炭酸をご紹介します。それぞれ誰でも耳にしたことがあるくらい馴染みのある液体であり、中学受験で頻出の液体です。
具体的な性質や他の物質を混ぜた時の反応などについてよく聞かれるので、以下で確認していきましょう。
酢酸
酢酸は、料理で使われる酢(す)の主成分です。料理用の酢には、酢酸が3~5%含まれています。
酢酸の特徴は、無色透明で強い酸味・刺激臭があることです。純度が99%程度と高い酢酸は融点が高く冬場などに固体となることがあり、氷酢酸と呼ばれます。
酢酸も中学受験でよく出題されますのでしっかり覚えておきましょう。
炭酸
炭酸は、二酸化炭素を水に溶かした液体です。
二酸化炭素は、次のような性質・特徴があります。
-
常温で無色無臭の気体(炭酸ガス)
-
空気より重い(約1.5倍)
-
水に少し溶ける(炭酸)
-
石灰水を白くにごらせる
-
マイナス79 ℃ で固体になる(ドライアイス)
-
燃えない
二酸化炭素を発生させる方法はいくつかあります。炭酸水素ナトリウムを加熱する方法などもありますが、石灰石に塩酸をかける方法がよく出題されます。
二酸化炭素の集め方は、2つあります。空気より重いので下方置換法で集める方法と、水には少量しか溶けないため水上置換法で集める方法です。
有機物を燃やすと二酸化炭素が発生し地球温暖化の原因になります。一方で二酸化炭素は生命活動に不可欠です。重要な気体で入試問題になることが多いので、しっかり覚えましょう。
中性の水溶液は?
中性の水溶液は、酸性でもアルカリ性でもありません。例えば、通常の水道水、食塩水、砂糖水などです。中性の水溶液は身のまわりにたくさんあります。
また中性の水溶液の場合、pHは目安として4.5~8.9程度とされています。中性の水溶液は基本的に電気を通しませんが、食塩水だけは電気を通すのでよく頭に入れておきましょう。
中性の水溶液は基本的に金属を
中性の水溶液の調べ方はBTB溶液かpH試験紙を使います。
- BTB溶液を緑色に変える
- pH試験紙を黄~緑色に変える(ほぼ変化無し)
中性の場合、リトマス紙の色は変わりません。フェノールフタレイン溶液の場合は、無色です。また紫キャベツ水溶液についても紫色のままです。
基本的に指示薬を変化させない溶液であることをおさえておきましょう。
アルカリ性の水溶液は?
アルカリ性の水溶液は、水溶液中で電離して水酸化物イオン(OH- )を生じる水溶液です。電離とは、水に溶けた物質が陽イオンと陰イオンに分かれることをさします。
最初に説明したとおり、pHが7を超え大きくなるほどアルカリ性が強いです。
アルカリ性の代表的な物質は、弱アルカリ性ではアンモニア水、強アルカリ性では水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などがあります。
アルカリ性の水溶液は、次のような性質・特徴があります。
-
赤色リトマス紙が青色になる(青色リトマス紙は変わらない)
-
緑色のBTB溶液が青色にする
-
無色のフェノールフタレイン溶液が赤色になる
酸性とアルカリ性の水溶液の見分け方
酸性水溶液、中性水溶液、アルカリ性水溶液を見分けるときに一番困難なのが、酸性とアルカリ性の水溶液を見分ける事です。
中性水溶液は砂糖水、食塩水など馴染みがある水溶液が多いのでわかりやすいですが酸性水溶液やアルカリ性水溶液は聞き覚えのない溶液も問題文では登場することがあります。
その際に重要なのは酸性とアルカリ性の水溶液の見分け方です。
指示薬だけでなく、それ以外の電気的な性質もおさえましょう。なかなか覚えにくいうえ、忘れやすい単元なので語呂合わせを活用するのがおすすめです。
中学受験で頻出の項目なのでぜひマスターしましょう。
リトマス紙での変化
リトマス紙は「酸性」と「アルカリ性」を色の変化で見分けることができるテスト紙です。青色リトマス紙にはアンモニア水、赤色リトマス紙には塩化水素が含まれています。
見分け方は、次の通りで、リトマス紙の色が変化します。
-
青色リトマス紙を酸性の水溶液につけると赤になる
-
赤色リトマス紙をアルカリ性の水溶液につけると青になる
青色リトマス紙をアルカリ性に、赤色リトマス紙を酸性の水溶液につけた場合は、いずれも変化はありません。また、中性水溶液にどちらのリトマス紙をつけても色は変わりません。
リトマス紙の色の変化の覚え方は、信号をイメージした次のような語呂合わせがおすすめです。
「赤が青になったら、歩きあり(アルキアリ)」
「アルキアリ」は「アルカリ」性とすぐ連想できるでしょう。酸性は逆ですから、覚えるまでもないです。
覚え方はこれに限りません。身近なものの語呂合わせなど自分に合う簡単で覚えやすいものを見つけて試してみるのもよいでしょう。
リトマス紙以外の指示薬
リトマス紙以外の指示薬もいくつかありますので、以下にまとめておきます。
どの指示薬も中学受験や高校受験でよく出題されます。ただ、紫キャベツ溶液は高校受験における出題頻度はそれほど高くありません。
- BTB水溶液:酸性は黄色、中性は緑色、アルカリ性は青色に変化
酸性からアルカリ性に向けて 「 き(黄)み(緑)のせい(青)である(アル)」と覚えるとよいでしょう。
-
フェノールフタレイン溶液:アルカリ性水溶液だけ無色が赤色に変化
-
紫キャベツ溶液:強い酸性→強いアルカリ性へ順に、赤・ピンク・紫・青・緑・黄と変化
紫キャベツ溶液の覚え方は、酸性からアルカリ性に向けて「赤(赤)ピン(ピンク)村(紫)の青(青)ミ(緑)ッキー(黄)」と覚えると比較的覚えやすいでしょう。
種類による電気的な性質
前にも触れましたが、物質は水に溶けると陽イオンと陰イオンに分かれます。水溶液の種類によってどちらのイオンが多いかが異なり、電気的な性質も違います。
酸性の水溶液は陽イオンのH+(水素イオン)が多いです。他方、アルカリ性の水溶液は陰イオン のOH-(水酸化物イオン)が多くなっています。
したがって、酸性の水溶液は電気的に陽性となり、アルカリ性の水溶液は電気的に陰性です。
酸性の水溶液についての問題7選
ここで、酸性の水溶液についての例題を7個見てみましょう。中学受験用の一問一答5個と、高校受験用問題2個です。
中学受験用の一問一答5選
まず中学受験用の一問一答5選です。どれも水溶液の基本的な問題ですので、確実にマスターしておきましょう。
(問1)酸性水溶液はBTB溶液で何色に変化する?
(答)黄色
語呂合わせを思い出しましょう。酸性からアルカリ性に向けて「き(黄)み(緑)のせい(青)である(アル)」ですから、最初の黄色です。
(問2)酸性水溶液によるリトマス紙の変化は?
(答)青色リトマス紙が赤色に変化する
こちらも語呂合わせです。「赤が青になったら、歩きあり(アルキアリ)」の反対ですから、「青(色のリトマス紙)が赤になる」です。
(問3)塩酸と酢酸で酸性が強いのはどっち?
(答)塩酸(酢酸は弱酸です)
塩酸は刺激臭があり人体に有害な強い酸性です。酢酸は料理用の酢で口に入れることができるほど弱い酸性です。pH値が7から遠くなるほど酸性が強くなることも、抑えておきましょう。
(問4)酸性水溶液に亜鉛を入れると何が発生するか?
(答)水素
酸性水溶液は、マグネシウムや亜鉛などの金属と混ぜると水素(H2)が発生することも覚えておくべき必須の特徴です。
(問5)個体が溶けている酸性水溶液を答えなさい
(答)ホウ酸
溶液に溶けている物質を溶質と言います。代表的な物質がホウ酸です。ホウ酸は常温では結晶か粉末状ですが、水に溶けたホウ酸水溶液は弱い酸性水溶液になります。
理科の実験や溶解度などの問題でよく出るので、思い出しにくいかもしれませんが、覚えておきましょう。
高校受験用問題2選
次は、高校受験用の問題を2つ考えてみましょう。少し思考力が問われる問題です。
酸性の溶液の見分け方
(問)塩酸、硫酸、炭酸水の3つの水溶液があった時どのように見分ければ良いか?
(答)
水溶液の見分け方は、よく出る問題です。見分け方はいろいろありますが、同じ酸性の場合はリトマス紙や指示薬は使えません。
どれも無色透明で同じに見える液体の場合の見分け方のポイントは、臭い、他の物質や液体と混ぜてみる、加熱するなどの方法があります。
この3つの水溶液の場合は、次の手順でチェックしていきます。
-
臭いをかぐ:刺激臭があるのが塩酸(硫酸と炭酸水は無臭)
-
石灰水を混ぜる:白くにごるのが炭酸水(石灰水の水酸化カルシウムと炭酸水の二酸化炭素が反応して白い炭酸カルシウムができる)
-
残った水溶液が硫酸
計算問題
(問)ある濃度の塩酸A 70㎤に水酸化ナトリウム水溶液B 40㎤加えると中性になった。Aを90㎤、Bを50㎤加えた水溶液は何性?
(答)
【考え方】
ポイントは、混ぜたときに水溶液が中性になるAとBの量の比率がわかっていることです。中和を維持できる水溶液の量を求めて、問題文の量と比較すれば容易に判断できます。
具体的には、加えるAかBの量を問題文どおりに固定し、中和に必要な他方の水溶液の量を計算して、求められた中和できる量と問題文の量を比べるだけです。
その際、中和するために求めたい水溶液の量をxと置いて方程式を使うと簡単です。例えば、次のように解きます。
【計算例】
塩酸A 70㎤と水酸化ナトリウム水溶液B 40㎤を加えると中性になるので、A90㎤を中和するのに必要なBの量をx㎤とすると、次の式が成り立ちます。
よって、内積=外積を使って
中和に必要な量xは51㎤強となるので、加える水酸化ナトリウム水溶液Bが50㎤の場合は、塩酸A全てを中和できません。ですから、両液を加えた水溶液は酸性になります。
さらなる演習を積みたいなら通信教育の活用がおすすめ
酸性の水溶液に関する出題は、中学受験・高校受験どちらにおいても非常に出ることが多いでしょう。通信教育を活用することでこのような範囲の問題を網羅することができます。
学習塾に比べ比較的費用が抑えられることもメリットの1つです。
受験対策に有効な通信教育については以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
高校生以上の人向けQ&A
学生向けQ&A掲示板「アンサーズ」では、酸性・塩基性などに関する様々な質問が寄せられています。
以下その質問の一部を抜粋して並べてみます。
他にも酸性・塩基性等について疑問があるのであれば、ぜひアンサーズで質問してみてください。
酸性水溶液の特徴についてまとめ
酸性水溶液の特徴についてまとめ
- 酸性水溶液は水に溶かすと水素イオンを生じるなどの特徴がある(pHは7より小さい)
- 酸性水溶液の種類は、酸性が強い塩酸・硫酸・硝酸と、弱い酢酸・炭酸がある
- 水道水・食塩水・砂糖水は中性、アンモニア水・水酸化ナトリウム水溶液はアルカリ性である
- 酸性と中性・アルカリ性の水溶液の見分け方はリトマス紙や他の指示薬を使う
酸性の水溶液の特徴や種類・見分け方について説明しました。酸性の水溶液は身のまわりにもたくさんありますが、似ているような水溶液でも性質や特徴が異なります。その違い・見分け方をしっかり覚えておくことが大切です。
この記事を参考にして酸性水溶液だけでなく、中性やアルカリ性水溶液についても理解を深め、きちんと見分けられるようにして下さい。