河合出版の物理教室の内容は本質的?難易度や使い方を現役東大生が徹底解説!
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「河合出版の『物理教室』の内容って本質的なの?」
「難易度はどのくらい?おすすめの使い方はある?」
などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。
河合出版の「物理教室」は国公立大の受験者向けの参考書で、物理の公式などの本質的な理解を深めることができます。特に東大・京大志望者の基礎固めにおすすめです。
今回は河合出版の物理教室の内容について解説します。現役東大生がその難易度や使い方を含めて詳しく説明するので、是非参考にしてください。
河合出版の物理教室の内容についてざっくり説明すると
- 学校では学べないような公式の本質的な意味がわかる
- 微積分の計算が使われている
- 「物理のエッセンス」などで基礎学習をしてから使うのがおすすめ
河合出版の物理教室の難易度は高い?
難関大志望者が物理の参考書として用いる河合塾の「物理教室」ですが、そのレベルや使い方については詳しく知らないという方も多いでしょう。
以下では、まず「物理教室」の難易度について解説します。
物理教室の基本データ
「物理教室」は大学入試には欠かせない問題が網羅的に収録されている演習系の問題集です。
物理的な視点や思考が身につくような分野ごとの良問が厳選されており、一通り解くだけでもかなりの知識を吸収し、実力を高めることができます。
なお、「物理教室」の出版社は、難関大の受験者には定番の網羅系参考書である「名問の森」や「物理のエッセンス」も出版する河合出版です。
問題は河合塾の講師によって厳選されているので、クオリティは申し分ないと言えるでしょう。
ちなみに「物理教室」の基本情報は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
題名 | 物理教室 |
著者 | 河合塾物理科 |
出版社 | 河合出版 |
価格(税込) | 1,915円 |
ページ数 | 480ページ |
物理教室は国公立大受験者向け
「物理教室」では高校物理の全分野(力学・波・電磁気・原子)に関する基礎〜旧帝大入試レベルも問題が取り上げられており、それらに対して講義形式の解説がなされています。
公式の使い方や典型的な問題の解き方はある程度身についているということが前提となっているため、基礎を一通りマスターした後でないと使いこなすのは難しいでしょう。
よって物理教室は、国公立大の受験者が基礎固めが済んだ夏以降に、物理を得意科目にするために使うのに最適の参考書と言えます。
東大・京大受験者の基礎固めに
物理教室は旧帝大を含めた国公立大学の受験者も対象としてますが、物理の入試問題が難しい東大や京大を受験するなら、この参考書は基礎固めとして使うのが良いでしょう。
特に「物理が苦手だがなんとかしたい」「基本的な公式はマスターしたから、もう基礎問題集では物足りない」などという東大の志望者におすすめです。
物理教室のメリット・デメリット
ここからは「物理教室」を用いることのメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
物理教室のメリット
物理教室を使うことには主に以下のようなメリットがあります。
式の本質的な意味がわかる
物理教室では、学校の授業や教科書では「暗記すべき」だけで片付けられている公式について、微分積分などを用いてその本質的な意味が詳細に解説されています。
公式を丸暗記して対応できるのは典型問題だけで、実際の入試では公式が本質的に理解できていないと解けないような出題が多いです。
そうした問題で正解を出すには、公式が意味するところを頼りに、上手くそれを応用しなければいけません。
特に難関大学の入試ではそのような問題は頻出なので、難関大志望なら物理教室は一読しておくべきです。
また学校の授業の理解を深めるために、辞書のように用いるというのも良いでしょう。
図が豊富に用いられている
物理教室は図解が豊富なので、それぞれの物理現象への理解を深めるにはもってこいの教材です。視覚的に捉えることができるので、現象が具体的にイメージでき、立式もしやすくなるでしょう。
また各分野で押さえておくべき知識のまとめなども掲載されており、知識を補強・整理して体系化するのにも役立ちます。
物理教室のデメリット
一方で物理教室を使うことには以下のようなデメリットもあります。
微積の計算を使っている
微分積分を使った物理の計算は、高等学校の学習指導要領の範囲外なので、普通の高校生には馴染みがない手法と言えるでしょう。
大学受験では有用で、一部の予備校では常套手段とされている計算方法ではありますが、特に数学が苦手な場合は微分積分を使った計算にアレルギー反応を示してしまう可能性もあります。
ボリュームが多い
物理教室は全部で480ページというかなりのボリュームです。1冊で高校物理の全分野・全範囲をカバーできるとは言え、一通り読み切るのは決して楽ではありません。
中には途中で挫折してしまう人もいるでしょう。特に物理が苦手で、基礎が十分にできていないという場合は、使いこなすのは難しいはずです。
河合出版の物理教室の勉強法・使い方
ここからは「物理教室」を使った具体的な勉強法について解説します。
始める前に物理のエッセンスなどで基礎固めを
先述した通り、物理教室は公式の使い方や典型問題の解き方はある程度わかっているという前提で作られています。
そのため、基礎が固まっていない状態で使えば、無駄に時間がかかってしまい、十分な学習効果は得られないでしょう。
よってまずは後述する「物理のエッセンス」などで基礎固めをして、それから物理教室へと進むのがおすすめです。
高校3年夏までの時間が取れる時に
物理教室は公式や物理現象の本質に迫るような内容であるため、知識を深めて応用力を付けるための基盤を構築するのには有用ですが、直前期の対策には向いていません。
直前期には知識を取り入れて理解を深める作業よりも、実践的な演習をたくさんするべきだからです。
よって物理の教室は、勉強に関しては比較的時間がある高校2年生〜高校3年生の夏までに読み切ってしまうのが良いでしょう。
スピード感を持って2周する
高校3年生の夏までに済ませたいということを考えても、1回1回の学習にはあまり時間をかけるべきではありません。
最初はわからなくても時間を空けてもう一度解けば理解できるようになっていることも多いので、じっくりと1周するのではなく、スピード感を持って2、3周するのが良いでしょう。
よって、10分考えてもわからないような問題に関しては積極的に答えを見て構いません。また間違えた問題やわからなかった箇所には印をつけておくと、2周目以降見直す際に便利です。
基礎まで戻って考えよう
物理教室は難関大の受験者向けであり、解説には微分積分も使われているため、なかなか理解できないということもあるでしょう。
よってわからなかった分野や単元に関しては、物理のエッセンスや良問の風など基礎レベルの参考書に立ち返って学び直すというのもおすすめです。
また学校の先生や物理が得意な友達などに質問するのも良いでしょう。
高校物理の独学勉強法や、苦手克服のコツについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
物理教室の前後で取り組みたい参考書
ここからは物理教室の前後で取り組むべきおすすめ参考書について解説します。
なお、それぞれの見出しの最後には各参考書の基本情報を明記しています。
橋元の物理基礎を初めからていねいに
東進ブックスから出版されている物理の入門書で、物理を学ぶ上では欠かせない基礎中の基礎がまとめられています。
次に紹介する「物理のエッセンス」よりも簡単なので、かなりとっつきやすいと言えるでしょう。よって物理や数学が苦手だが、なんとか合格点まで持っていきたいという方におすすめです。
項目 | 内容 |
---|---|
題名 | 橋元の物理基礎をはじめからていねいに |
著者 | 橋元淳一郎 |
出版社 | ナガセ |
価格(税込) | 1,210円 |
ページ数 | 320ページ |
特徴 | 図やイラストを豊富に用いた解説で物理の各分野を根底から学ぶことができる |
使用感 | 教科書に比べたらかなり簡単 |
物理のエッセンス
同じく河合出版から出ている参考書で、物理に関する基礎的な問題が網羅的に収録されています。難易度ですが、こちらは定期テストレベルなので物理教室よりも簡単です。
図を多用しながら平易な表現で説明してもらえるため、物理における重要事項を感覚的に理解することができます。また公式も含めて問題を解くためのノウハウもきちんと身に付けることが可能です。
出版社が同じということもあり、余程物理が苦手でない限りは、物理教室の前の基礎固めにはこちらを用いるのが良いでしょう。
一方で物理が特別苦手なら上記の「はじめからていねいに」をおすすめします。
項目 | 内容 |
---|---|
題名 | 物理のエッセンス 力学・波動 |
著者 | 浜島清利 |
出版社 | 河合出版 |
価格(税込) | 924円 |
ページ数 | 165ページ |
特徴 | 感覚的な理解を含めて試験問題を解くために必要となる最も基礎的な事柄が効果的に学べる |
使用感 | 教科書がなくてもこれ1冊あれば十分という感じ |
良問の風
こちらは演習がメインの参考書で、出版社と著者は「物理のエッセンス」と同じなので続けて使うのも良いでしょう。難易度は物理教室と同じかやや易しいという程度です。
共通テスト(旧センター試験)〜入試標準レベルの頻出かつ典型的な問題が収録されているため、難関大を目指すなら基礎固めや二次試験対策の導入として用いることをおすすめします。
項目 | 内容 |
---|---|
題名 | 良問の風 物理 頻出・標準入試問題集 |
著者 | 浜島清利 |
出版社 | 河合出版 |
価格(税込) | 924円 |
ページ数 | 119ページ |
特徴 | 頻出かつオーソドックスな入試問題を理想的に再構成してテーマごとに収録した一冊 |
使用感 | 力学と電子分野が特に充実している |
名問の森
物理教室よりもさらに難易度が高い応用問題に挑戦したい場合は「名問の森」がおすすめです。
入試問題における上級者向けの良問をベースに作成された問題が収録されているため、一筋縄ではいかない出題も多いでしょう。特に4段階中の最高レベルはかなり難しいはずです。
この参考書を何周もして東大に合格する学生もいるため、難関大を目指すなら積極的にチャレンジしてみるのが良いでしょう。
なお、こちらも「物理のエッセンス」と同じ出版社、同じ著者なので、良問の風と合わせて用いるのも有意義です。
項目 | 内容 |
---|---|
題名 | 名問の森 物理 力学・熱・波動1 |
著者 | 浜島清利 |
出版社 | 河合出版 |
価格(税込) | 1,100円 |
ページ数 | 224ページ |
特徴 | 入試問題の良問に手を加えてさらに磨いた「名問」を収録した上級レベルの問題集 |
使用感 | 問題量が丁度良く解説もわかりやすいので本質的な物理学習には良い |
新物理入門問題演習
新物理入門は高校生が使える物理の参考書としては最高難度と言われる1冊です。微分積分を多用した解説が特徴になります。
もはや大学レベルと言っても過言ではないため、高校生が自力で読破するのは不可能に近いと言われることもありますが、微分積分を使った解法を学びたいという方にはおすすめです。なお、筆者は物理が好きだったので、こちらの教材をメインに演習を積んでいました。
またこの参考書では高校物理の全範囲が網羅されており、問題数は計125題とボリュームも十分なので、ハイレベルな問題演習を徹底的に積みたいという方にも良いでしょう。ちなみに問題の構成は以下の通りです。
- 初級〜中級レベルの基本演習67題(創作問題+入試問題)
- 中級〜上級レベルの実戦演習37題(全て入試問題)
- 上級レベルの記述演習21題(全て創作問題)
項目 | 内容 |
---|---|
題名 | 新・物理入門問題演習 |
著者 | 山本義隆 |
出版社 | 駿台文庫 |
価格(税込) | 1,540円 |
ページ数 | 248ページ |
特徴 | 高校物理の全範囲を網羅した計125題(上級レベルの記述問題を含む)が収録されている演習書 |
使用感 | 解説がとてもわかりやすい・記述問題の解答が手書きなのも良かった |
上記の参考書を使うおすすめの順番
上記の参考書は以下のような順番で使うのがおすすめです。
目的 | 参考書 | 備考 |
---|---|---|
導入 | 橋下の物理基礎を初めからていねいに | 物理が苦手な人向け |
基礎固め | 物理のエッセンス | 特別物理が苦手でないならここから始めても良い |
標準的な問題演習 | 良問の風 | センター試験〜入試標準レベル |
やや応用的な問題演習 | 物理教室 | 公式などの本質を学んで応用力を培うための素地を作る |
応用的な問題演習 | 名問の森 | 難関大受験者向け・「物理のエッセンス」「良問の風」と著者及び出版社が同じ |
さらに応用的な問題演習 | 新・物理入門問題演習 | 微分積分を使った解法を学びたい上級者向け・かなり難しいのでやらなくても良い |
基本的には「物理のエッセンス」「良問の風」「名問の森」という同じ著者・出版社の三部作に「物理教室」をプラスするという組み合わせがおすすめです。
物理教室で本質的な理解を深めることで、より学習効果が高まります。
「橋下の物理基礎を初めからていねいに」と「新・物理入門問題演習」は必要な方だけで構いません。
前者は物理に抵抗感がある人、後者は最高レベルの問題演習で物理を得意科目にしたい人や微積分を用いた解き方を学びたいという方におすすめです。
河合出版の物理教室の内容まとめ
河合出版の物理教室の内容まとめ
- 図が豊富なので視覚的なイメージで物理の本質が学べる
- 高校3年生の夏までに取り組むのがおすすめ
- スピード感を持って2、3周するのが良い
河合出版の物理教室の内容について解説しました。
物理教室では微分積分も用いて学校の授業や教科書では学べないような公式の本質が解説されています。そのため、東大や京大をはじめとする国公立大学の志望者が基礎固めとして用いるのが良いでしょう。
なお、物理教室は公式の使い方や典型的な問題の開放はある程度身についているという前提で作成されているため、まずは「物理のエッセンス」などでそれらを身に付けてから臨むのがおすすめです。
また直前期にはより実践的な演習をたくさんするべきなので、物理教室を使って理解を深める作業は高校3年生の夏までに済ませるのが理想的だと言えます。
以上を参考に、物理教室を受験勉強に取り入れてみてください。