反転授業のメリット・デメリットは?学習効果や導入事例・注目の理由まで徹底解説!
「反転授業ってどんな勉強法?」
「反転授業や反転学習のメリット・デメリットは?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
反転授業や反転学習は近年注目を集めている新しい勉強法で、日本での導入事例もあります。
保護者の方にとって、反転授業とはどのような効果があるのか、気になりますよね。
こちらの記事では、反転授業や反転学習の概要や学習効果について、詳しく解説していきます!
反転授業と反転学習についてざっくり説明すると
- 自宅でインプットを行い学校で演習をこなす、これまでの授業を反転させた勉強法
- 生徒の自主性が非常に重要
- 親の負担が増えてしまうデメリットもある
今注目の反転授業とは
反転授業とは、予め家庭で映像教材を用いて予習の形で授業を受け、その発展学習や応用の演習などを学校の授業の時間に行う勉強法です。
今までは、学校の授業でインプットや基本的な知識の授業を行い、その応用や演習を宿題という形でを家で行っていました。
つまり、授業と家庭でのインプットとアウトプットの役割が逆になっていることから、反転授業と呼ばれているのです。
反転授業の歴史
それでは、反転授業の歴史や導入された経緯などを見ていきましょう。
反転授業は2007年にアメリカのコロラド州で始まった、比較的新しい教育法です。
デジタル教材の普及と教室外のICT環境の整備を背景として、長期欠席者用の学習を支援するためにこのようなアイデアが生まれました。
その後もミネソタ州やデトロイト州でも導入され、多くの実績や成果を上げたことから反転授業の評価が高まっていきます。
日本にもたらされたのは2011年で、東大の教授が反転授業を紹介し、実際に2012年に宮城県の小学校で導入されました。
子どもたちの自宅での学習時間が伸びたことから、日本においてもじわじわと注目が高まりつつあるのです。
反転授業のメリットは?
こちらのトピックでは、反転教育のメリットについて紹介していきます。
アウトプット中心で効率的に学習できる
反転教育ではインプットの部分を自宅で行うため、基本的な内容の理解を学校の授業内で行いません。
つまり、自宅でしっかりと基本的なインプットを行っていないと授業についていけず取り残されてしまうため、子どもの危機感を煽る効果があります。
これにより、学校の授業ではいきなり本格的な演習が行うことが可能になります。
また、授業では大人数が集まっているため、ディスカッションや話し合いを通じて学んだことをより深めることもできるのです。
ディスカッションや話し合いを行うことで「考える力」「伝える力」を養うことができる上に、発展問題の解説を教師が行うことで、これまでの授業よりも高い学習効果を効率を期待できます。
問題解決能力・理解力が高まる
反転授業では学校の授業内で生徒が問題をそれぞれ解いていき、問題の解説を教師が行ったり考え方をみんなで話し合ったりします。
レベルの高い難しい問題では考え方や解き方が複数あったり、また生徒の学力もまちまちなので、そもそも分からない生徒もいたりするのが普通です。
そのようなときに、自分の解き方を人に説明したり、効率の良い解き方を話し合ったりすることで、問題解決能力を身に着けることができるのです。
「人に説明する」という作業は非常に重要なアウトプット方法であるため、解説の話し手も聞き手も問題解決能力と理解力を高めることができるメリットがあるのです。
教員が理解度を把握しやすい
反転授業では学習の基礎を家で学び演習の準備をしてから授業に入るため、教師にとっては生徒がどれくらい問題を解けているか分かりやすいというメリットがあります。
従来の学習スタイルでは基本的に教師が一方的に授業をする形だったため、個々人の勉強の進捗を把握することがほとんど不可能で、テスト以外の機会で生徒の理解度を確認するのは難しいのが実情でした。
教員が生徒個々人の理解度を把握することでそれぞれに合った学習方法や学習ペースを提案できるようになるので、生徒にとっても教員にとっても反転教育はメリットがあるのです。
アクティブラーニングできる
反転授業はディスカッションを多く導入しており、ディスカッションや話し合いを通して物事の本質や考え方を理解するアクティブラーニングにもなっています。
ディスカッションや話し合いに参加するためには、しっかりと自宅で予習をして、その上で分からないところや聞きたいことを明確にしておく必要があります。
しっかりと自分の疑問点を把握してから授業に臨み、それをみんなで話し合うことができるのが反転授業の魅力です。
このようなアクティブラーニングをすることで思考力や分析力を鍛えることができるため、保護者にとっても非常に魅力的な教育法なのです。
繰り返し学習できる
反転授業は予習を家で行ってから授業を受けるので、基礎が分かりにくいと思った時は繰り返し予習の映像授業を見て学習し直すことができます。
これまでの学校の授業では「繰り返し聞く」ということがそもそも不可能だったので、この点においても反転学習は効率の良い学習なのです。
基本的な理解が成長に直結するので、学習の基礎を重視できるこの学習法には勉強をサポートする仕組みが出来上がっています。
塾に通わなくても自宅で繰り返し授業を聞くことができるので、塾の費用がかからないというメリットもあります。
自分のペースで意欲的に学習ができる
反転授業では、一斉授業とは異なり自宅で動画を見る形式を取るため、自分のペースで意欲的に取り組みやすくなるというメリットもあります。
子供たちが一人一人、それぞれの能力に応じて必要な部分のみを学習することができるため、効率が高まるだけでなく授業に対するモチベーション維持という点でも効果的でしょう。
特に、学力の高いお子様の場合、必要な部分だけを学習して、余った時間をさらなる学力向上や知識を深めることに利用できるため、非常にメリットが大きいです。
反転授業のデメリットや課題は?
逆に、反転教育のデメリットなども確認しておきましょう。
生徒の意欲がないと成立しない
反転教育は生徒が学校の外で予習を行い基礎を理解して、さらに演習もこなしていることが前提の教育法です。
そのため、生徒が自主的に勉強を行い、予習をしていなければそもそも成り立たない危険を孕んでいます。
自宅でしっかりと予習を行わない生徒としっかりと行う生徒との格差ができてしまうため、生徒の学習意欲ありきの勉強法であることは理解しておきましょう。
とはいえ、ある程度生徒に学習意欲があることが前提となるため、小学生の内からこのその学習スタイルを定着させるメリットは大きいです。
自主的に勉強に励む習慣が身に着けば中学や高校に進学しても自主的に勉強することが期待できるため、子どもの成長に大きく役立つのです。
家庭と親の負担増加
自宅で予習をこなさなければならない以上、家庭においてある程度の学習時間を確保する必要があります。
また、学校とは違い疑問があっても質問できるのは両親しかいないため、どうしても親が一緒に勉強に取り組みサポートをしてあげる必要があります。
宿題と同じような感覚で子どもの面倒を見なければならず、親の負担が増えてしまうことが懸念されています。
しかも、最近は共働き世帯が増えているため、なかなか寄り添ったサポートが難しいのが現実です。
慣れない内は親がしっかり見守って勉強のサポートをしなければならない点は、大きなデメリットと言えるでしょう。
デジタル環境の整備も必要
自宅学習を行うためには映像授業を見られる環境が整っていなければならず、タブレットやパソコンが必須となります。
生徒の家庭がデジタルに対応していることが求められるため、インターネット環境が整備されていない家庭は設備を導入しなければなりません。
このように、家庭において様々な負担が増えてしまう点も今後の課題と言えます。
また、学校の授業形式に慣れていてオンライン形式の勉強に慣れていない生徒はなかなか集中できず、以前よりも学習効率が悪くなってしまうことも懸念の一つです。
生徒に対する個別対応が難しい
当然のことながら、生徒の学習能力には差があるため理解度が非常に低い生徒は基礎から全くわからない状態です。
そのため、このような生徒には自宅で予習させてもあまり意味が無く、反転学習のシステムがほとんど役に立たないことになってしまいます。
また、そのような生徒は自主的に予習をしない傾向があるため、差が開いてしまい学力の格差が広がってしまいます。
そのような生徒に対して個別で対応することは難しいため、このような点も反転学習のデメリットと言えるでしょう。
このように「反転学習は生徒の自主的な姿勢ありき」という点はしっかりと留意しておく必要があります。
授業準備が大変になる
反転授業の場合、教師は事前に授業動画の作成を行わなければいけません。
動画の編集を行わなければいけなかったりと、オンライン教材を作成することに慣れていない教員にとってはハードルが高く、授業準備が大変になってしまうでしょう。
一方で、前年度利用した物を使いまわしたり、複数のクラスで同じ授業動画を流用したりできるため、一度オンライン教材が完成してしまえば長期的な負担を軽減することができます。
反転授業の効果はある?
反転学習の効果について言及している論文に湘南工科大学の梅澤克之先生による「効果的な反転授業の提案と実験による評価」があります。
この論文によると、反転授業を行う上で理解の度合い別に生徒を振り分けたところ「理解度の低い学生に対しても高い学生に対しても、学習効果があったことが認められた」とあります。
また、「理解度の低い学生に対して底上げの効果があるだけでなく、理解度の高い学生に対しても高度な授業を行えたことが確認できた。」という記述があります。
つまり、反転学習の効果は高く、理解度の高低に関わらずすべての生徒が高い学習効果を享受できるわけです。
なお、今後は自動的にグループ分けできるようなツールを開発することで教員の負担を軽減できると考えられるため、教員の負担を減らす効果も期待されています。
このように、実験の裏付けからも「反転授業の効果はある」ということが証明されたため、今後反転授業の導入がますます増えていくと考えられています。
反転授業の実例と今後
佐賀県のスマイル学習
日本国内でも反転学習を導入した事例があり、佐賀県武雄市においてスマイル学習という名の反転授業を行っています。
なお、「スマイル(SMILE)」とは「School Movies Innovate the Live Education-classroom」の頭文字で、タブレットPCを用いて行われました。
武雄市では、自主的に自宅学習をしない生徒を少なくするために、予習の動画を子どもたちが興味を持ちやすい内容にしました。
このような工夫もあってか、予習をしない生徒や忘れてしまう生徒は非常に少なく、保護者から「自宅での予習が家庭での勉強習慣の確立に役立っている」という声も寄せられています。
点数的な成績への影響は報告されていないものの、このように学習意欲の向上など、一定の効果があったと考えられています。
なお、武雄市では今後もプログラミング教育や、英語のネイティブと交流するオンライン英会話など、様々な場面で反転学習の導入を見込んでいるようです。
企業の人材育成で活用
ビジネスの人材育成の場面でも、反転教育は役立っています。
新卒者が講義動画などを先に見ておくことで予習をこなしておき、すぐに実務型のアウトプットを実施できる点は大きなメリットです。
近年は人材不足もあり、0から社員教育をする余裕がない企業も多いです。
つまり、反転教育を活用することで人材育成を動画視聴で一括で行うことができ、コスト削減にもつながる大きなメリットがあるのです。
一部の企業では既に導入しているところもあるため、今後もますます反転教育の導入は進んでいくでしょう。
感染症の影響でますます注目を集めている
近年は授業のオンライン化が進んでいるため、反転学習はオフラインとオンラインの使い分けという点でも推進されやすい学習方法と言えます。
また、今般発生したコロナウィルスの影響もあり、自宅でオンライン学習をすることの注目度が高まっています。
外出に制限を受けると、当然のことながら学校へ登校することも難しくなってしまい、十分な勉強ができない恐れがあります。
そこで、各家庭にオンライン環境を整備してオンライン学習を取り入れることで、勉強の遅れを最小限にすることが可能です。
また、自主的に自宅で予習をする生活習慣が身に着くメリットもあるため、ますます注目を集めているのです。
反転授業の導入のために必要なこと
反転学習の導入を成功させるために、以下の点を押さえておきましょう。
導入前の事前準備を徹底的に行う
反転学習の導入のためには、しっかりと時間をかけて事前準備を行うことが必要となります。
動画を視聴するための環境整備はもちろん、どのような授業・クラスで導入するかの検討、保護者への説明などやるべきことは非常に多いです。
その上で、教師同士の意見交換や具体的な学習プランの策定など、じっくりと時間をかけて準備を行う必要があります。
この点が不十分なまま導入してしまっては、期待通りの成果を実現することは難しいです。反転授業の導入には時間・労力ともにかかることを理解し、徹底した準備を行いましょう。
教師同士の情報交換が必須
反転授業によって、一部のクラスだけ特別な学習スタイルをとってしまうと、クラスごとの公平性が保てなくなったり、学習進度が合わなくなったりとさまざな問題が発生してしまいます。
そのため、教師同士でこまめにコミュニケーションをとり、足並みを揃えることが必要です。
また、教師同士で反転授業導入後の効果を共有することで、実施後の改善につなげることもできます。
反転授業の目的をしっかりと説明する
十分な説明なく反転授業を導入してしまうと、生徒・保護者ともに困惑してしまいかねません。
しっかりとした学習効果を得るためには、事前に丁寧に説明をし、生徒がしっかりと予習を行う態勢を作っておくことが必要です。
また、保護者に自宅での学習サポートをお願いするためには、反転授業の効果をしっかりと理解していただくことが必要不可欠となります。
反転授業はどんな場合に導入すべき
反転授業・反転学習は特に以下のようなケースや教科において特に効果的です。
アウトプットが多い教科で特におすすめ
反転授業は、基本的にどのような科目にも対応可能となっています。
中でも特に効果を実感できるのが、アウトプットを多く行う教科です。具体的には、数学・理科・英語などが挙げられるでしょう。
実際、反転授業を導入している学校においては、主に理系科目で行われていることが多いです。
企業の人材育成にも活用できる
反転学習は、企業の研修や人材育成の場でも活かすことができます。
事前に動画などを用いて学習をしてもらうことで、研修の時間をより効果的に利用することができるのです。
また、すでに理解している部分がある場合、研修を受ける側の人間が自分で飛ばすこともできるため、無駄な時間を割かずに済む、というメリットもあります。
反転授業のメリット・デメリットについてまとめ
反転授業のメリット・デメリットまとめ
- 反転授業とは自宅で基本の学習をし、学校で応用学習をする勉強方法
- 生徒の問題解決能力・理解力が高まるメリットが期待される
- 調査の結果、理解度の高低に関係なく効果が認められた
- 感染症の影響もあり、今後ますます注目を集めていくと考えられる
反転学習はまだまだ導入事例は少ないものの、今後ますます注目を集めていくであろう勉強法です。
何事も最初は懐疑的な目で見られがちですが、生徒の問題解決能力・理解力を高めたり感染症が流行しても勉強できることを考えると、反転授業や反転学習は時代に即した勉強法と言えるでしょう。
「このような勉強法もあるんだな」と知っておくことで勉強の幅を広げることができるので、ぜひ反転授業のメリットについて知っておいてください。