教育系YouTuber葉一にインタビュー!「とある男」が授業動画の裏に秘めた信念

新型コロナウイルスの流行により、オンラインでの学習が活発化している中、YouTubeも学習ツール・情報収集の場として注目されています。

今回は、そんな「教育系YouTuber」のパイオニア的存在であり、チャンネル登録者数130万人以上の「とある男が授業をしてみた」チャンネルを運営する葉一(はいち)さんに独占インタビューすることができました!

子供たちに絶大な人気を誇る勉強動画がどのような想いで作られているのか、パイオニアとしての苦労や今後のビジョンなど、貴重なお話を伺うことができました!

教育系YouTuberが語る「勉強する理由」など、ここでしか読めない情報も満載です!

ファンの方もまだそうでない方も、このインタビューを読めば葉一さんの魅力が伝わること間違いナシです!ぜひ最後までご覧ください!

葉一さんのプロフィール

教育系YouTuberのパイオニア。1985年生まれ。東京学芸大学を卒業後、営業職、個別指導塾の塾講師として働く。
「子供たちに格差のない教育を」との思いで独立、2012年からYouTubeにて、小学3年生〜高校3年生を対象に授業動画の無料配信を行っている。チャンネル登録者数は138万人を超え(2021年4月時点)、TBS「情熱大陸」への出演経験もある。
著書に『一生の武器になる勉強法』(KADOKAWA)、『自宅学習の教科書』(フォレスト出版)など。

教育系YouTuberのパイオニアとしての苦労

インタビューを受ける葉一さん


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古田

本日は大変お忙しい中、快くインタビューに応じて下さりありがとうございます。

学びTimesを運営しております、株式会社ベンドの古田と申します。

本日はどうぞ宜しくお願い致します!

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葉一さん

「とある男が授業をしてみた」チャンネルの葉一です。

こちらこそ宜しくお願いします!

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古田

本日は質疑応答形式でのインタビューをさせて頂きたく存じます。では、早速1つ目の質問に移らせて頂きます。

葉一さんはいわゆる「教育系YouTuber」として昔から活動されていらっしゃいますよね。実は私も小さい頃に動画を参考にして勉強させていただいたことがあります。

おそらく最初は他に同じような解説動画をあげているYouTuberの方がほとんどいなかったと思うのですが、教育系YouTuberのパイオニアとして苦労された経験はどんなものがありますでしょうか。

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葉一さん

動画を見て下さっていたんですね!ありがとうございます。

確かに僕が授業動画を上げ始めた頃は、まだ「動画で勉強なんてありえない」「教育を馬鹿にしているのか」という雰囲気があり、教育関係者や親御さんの層から散々叩かれました。

活動を始めて2年くらい経った頃から、そういった雰囲気は少しずつ弱まってきて受け入れられているのを実感し始めたのですが、最初の2年間は本当に辛かったですね。

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古田

なるほど。新しいものはどうしても反発を受けやすいですよね。

なぜ2年間も辛い思いをしながら、動画投稿を続けられたのでしょうか?

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葉一さん

絶対に自分の活動は間違っていないと信じていたからです。僕は昔塾講師として働いていましたが、そこでは子供を塾に通わせる経済的余裕のある子供しか教えられないんです。

でも僕がYouTubeに授業動画を載せれば、勉強したい子は誰でもそれを見て無料で勉強ができるわけです。

実際徐々にファンも増えてきて、定期的にコメントをくれる子も現れたりしたので、これは続けるべきだと思えたのが大きかったです。

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古田

教育格差を無くす使命と、ファンからの声が支えになったんですね。親に無理矢理行かされる塾よりも、自分で開いて利用する動画の方が高い学習効果を得やすそうとも感じます。

多面性を見せる動画作りを意識


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古田

葉一さんの動画にはファンの方からのコメントが多かったり、教育系YouTuberの中ではTwitterでの反響も大きいように感じます。

ファンの獲得については何か意識されていることがあるのでしょうか?

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葉一さん

葉一という人間を応援してもらう必要性を実感した経験がありました。

「もし大企業が講師を大量に使って動画を作ったら動画の数で圧倒的に負けてしまうのではないか」という不安が初めはあって、実際にTry itさんなどのそういったサービスが増えました。

しかし僕のチャンネルは予想に反して人気を保つことができたんです。企業のサービスは教科ごとに先生が違いますが、僕は5教科全てやっていたので、僕のチャンネルには「葉一先生」に教わりたい子が見にきてくれたんです。

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古田

「葉一先生」のブランドができていて、ファンが葉一さんの動画を見にきてくれることで助かった、ということでしょうか。

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葉一さん

はい。それから応援してくれる人との繋がりに力を入れるようになりました。最初は視聴者からの相談に顔出しで答えたり、その次に他のYouTuberさんと積極的にコラボもするようになりました。

授業がわかりやすいことは必須ですが、それだけだとお堅いイメージしか残らないと思います。人は多面的なものに惹かれると思うので、意外な一面も見せるように心がけています。

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古田

確かに、最近は歌の動画もあげられていましたね。コメント欄でも驚きつつ賞賛している声が目立ちました。 今のお話を聞いて納得する部分が多かったです。

葉一さんが考える教育現場の在り方

質問をする男性


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古田

先程のお話で、ファンの獲得にも注力されていることがわかりました。実際に葉一さんのYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」は登録者数130万人を超えています。

大人気YouTuberとなった今、葉一さんだからこそできることや社会に提供できる価値として、どのようなものがあると考えていらっしゃるのかお聞きしたいです。

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葉一さん

昔は「動画で勉強なんて」と言われていましたが、例えば数学の公式のように、学校の勉強って動画で代替できるものやその方が適しているものもあると思うんです。

もちろんそうでないものもありますが、教育の現場で蔓延っている「画一的なやり方が正しく、それ以外は許されない」雰囲気は問題でしょう。

もし動画教材を授業の中で使いたい先生がいたら、それが可能である現場にしていきたいです。それには動画教材の効果を伝えることが必要ですが、僕の動画がより広まることで人々の認識を改めることができると考えています。

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古田

なるほど。教育現場での選択肢を作り、それが選べるようにするという目標があるんですね。

葉一さんが思う、学校や先生の役割についてもお聞かせ願えますか?

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葉一さん

先生の役割は「聖職者」と言われていましたが、次第に「伴走者」のようなものに変わってきていると考えています。

これから世の中に学習ツールはどんどん増えていきますが、それらをいきなり並べられても、子供はどれを使えば良いかわからないでしょう。学校や先生は、どれをどのような順番で、どのように使えば良いのか教えてあげる役割に移行してきていると思います。

またもちろん、集団活動を学ぶコミュニティとしての役割は、学校の大きな価値ですよね。

でも集団活動に向かない子はいてよくて、不登校だって選択肢の一つとしてそれで良いはずだと思っています。「不登校=悪」のような固定観念もなんとかして変えていきたいですね。

YouTubeの授業動画と19chの使い方


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古田

次に、葉一さんの動画教材や、運営されている「19ch(塾チャンネル)」の使い方についてお聞きしていきます。

新型コロナウイルスの流行でオンライン学習の流れに拍車がかかったと思いますが、自宅学習の際に葉一さんの動画教材を、子供たちにどのように使ってもらいたいですか?

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葉一さん

理想を言うなら、使う際にはまず目的をはっきりさせてほしいです。

僕のチャンネルには動画が大量にありますが、つまずいた部分だけピックアップして動画を見て、しかも約15分の動画の中のどの部分を聞くのか、どの練習問題が必要かというところまで考えて使ってほしいんです。

何事も、自分で課題意識や目標を持って取り組み、必要なところだけを拾うことができる人は、そうでない人に比べて成長が早いです。

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古田

なるほど。勉強だけに留まらず、新しいことを学ぶときの姿勢のようなものも含めて練習してほしいということですね。

基本的には、学校や塾のサポートツールのようなポジションを考えられているのでしょうか?

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葉一さん

基本的にはそうですね。ただ不登校の子などは学校や塾で授業を受けられませんから、そういった子は19chでまとめてあるように、前から順番に動画を見ることで授業代わりにもできます。

「教科書を丸々一冊動画化する」がテーマなのでつまずきやすい部分とそうでない部分が混ざっていますが、その子に合わせた使い方をしてもらえればと思います。

葉一さんの思うオンライン学習のメリット・デメリット


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古田

葉一さんは授業動画の投稿者として、自分で選ぶ力を重視されているということが伝わってきました。

関連して、葉一さんが考えるオンライン学習ならではのメリット・デメリットについてもお聞きしたいです。

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葉一さん

オンラインのメリットは、なんといっても気軽さでしょう。とっつきやすいですし、自分の部屋などでも受けられます。繰り返し学習に向いているのも長所ですね。

デメリットは、気軽に受けられる反面、強制力が弱いこと。 誘惑が多いですし、YouTubeなんて自分が好きなタイプの動画がたくさん表示されていますからね(笑)

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古田

どちらもよくわかります。葉一さんのチャンネルではオンライン学習のデメリットを和らげるために何か工夫されていたりしますか?

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葉一さん

はい、視聴者と一緒に勉強する、いわゆる「Study with me配信」を行っています。

最初は視聴者さんからのリクエストで、本当に意味があるのか疑心暗鬼だったんですが、試しにやってみたら予想以上にたくさんの子が使ってくれたんです。

僕自身も他のYouTuberさんのStudy with me動画で勉強してみたら意外に集中できたので、それから何度も開催しています。多い時では2~3000人の子が配信に来てくれています。

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古田

確かに、リアルタイムで自分のお気に入りのYouTuberが勉強している動きが見れるのは、強く繋がっている感覚がありますよね。

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葉一さん

そう思います。最近の子はSNSなどで繋がりやすい分寂しがり屋だったり、最近は特に感染症対策で人と接しにくくなっていますから、同じ時間を共有できるこういった配信は続けていきたいです。

「勉強する意味」はどこにあるか?

手振りを入れながら話す男性


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古田

ここまでのお話で、勉強に対して主体性を持つことを大切だと考えていらっしゃることが伝わってきました。

そこで勉強系YouTuberである葉一さんにズバリお聞きしたいのですが、勉強をしない選択肢はアリでしょうか?またなぜ勉強をするのでしょうか?

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葉一さん

とても鋭い質問ですね!僕は学校で習うような勉強をしないという選択肢は、その子が打ち込めるものがあるなら全然アリだと考えています。

わかりやすいところではスポーツ選手など、勉強以外でも何かに情熱を持って全力で取り組んでいる人はかっこいいですよね。

学歴なんていうのは「勉強という一つのもので努力ができる人である証」でしかなくて、それよりも何か一つのものに打ち込んで結果を出す成功体験が大切だと思います。

だから他に打ち込むものがあるならそれを一生懸命やればいいですし、もし自分の持つエネルギーを注げるものがまだ見つからないなら、それを身近で成果が出やすい勉強に向けるのが僕は最適だと思っています。

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古田

ありがとうございます。学校の勉強をする意味について悩む全ての子供たちに伝えたい言葉でした。

葉一さんは、勉強というもので成功体験を得る手助けをしているということなんですね。

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葉一さん

そうですね。「やったら伸びる」という体験はとても貴重で、他のことに挑戦するときにも必ず活きてきます。

僕も子供の頃は勉強をする意味なんてわかりませんでしたが、大人になって振り返ったときにその経験は無駄だったとは思わないですし、むしろ自信になっています。

勉強へのやる気を引き出すプラン


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古田

他のことに打ち込めていないけれど、勉強へのやる気も特にないという子がまだまだいると思います。

葉一さんの次なる目標はそういった層を振り向かせることになるのかなと考えたのですが、何かプランなどは頭の中にあったりしますか?

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葉一さん

実は直接的な方法は思い付いていないんです。子どものやる気スイッチは大人が一番入れにくいです。大人が僕の動画を「これ良いから見なさい」と言ったところで、「うるさいな」と思われるのがほとんどでしょう。

だから鍵は「友達」だと思います。 仲の良い友達が3人、4人と使い始めたら、じゃあ自分もと使い始めるかもしれません。

具体的ではないですし遠回りですが、そうやって多くの子供たちに主体性を持って取り組んでもらえるようにしていきたいと、ぼんやり考えています。

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古田

葉一さんの動画がさらに人気になってたくさんの子供たちが利用してくれることが、勉強への主体性を高めることにつながるというところまで考えていらっしゃるんですね。

貴重なお話をありがとうございます!

葉一さんと19chの今後の展望

指を折りつつ展望を語る男性


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古田

最後に、これからの葉一さんの活動の展望についてぜひお聞かせください。

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葉一さん

学校の先生に対するイメージを改善するお手伝いができればと考えています。

学校の先生は良い授業をするのが当たり前というイメージに応える努力をしているのに、先生の立場は弱くなり、対応しなければならないクレームの内容には耳を疑うようなものもあります。

自分の時間を削って目の前の子供たちの面倒をみる先生は素敵なのに、先生の不遇さは大人だけでなく子供にまで伝わり、先生は子供のなりたい職業ではなくなってきてしまっているんです。

先生という立場上情報発信もしにくいですし、同業者間の褒め合いをしても今の状況ではサムい目で見られかねません。そこで、子供たちや親とも繋がっている僕が、ちょうどいい距離感で外から働きかけを行えないか模索しています。

先生の社会的地位を上げるまでは行かなくても、子供たちが「目の前の先生にも良いところがあるのかも」と思えれば、少しずつ状況は変わってくるのではないかと考えています!

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古田

葉一さんだからできる、教育現場を変えていく取り組みということですね。

今回は、葉一さんの活動のひとつひとつが、信念のようなものに裏打ちされているのだと分かったインタビューとなりました!

改めまして、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!