大学入試共通テスト数学の勉強法は?傾向や対策からおすすめ参考書まで全て解説!
「試行調査で解けない問題が多かったけれど、センター試験とどれくらい難易度に差があるの?」
「共通テストでも高得点を取れるようにしたいけれど、どうやって対策を立てたらいいの?」
いよいよ共通テストが始まりますが、初年度であることやギリギリまでテスト形式が定まらなかったこともあり、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、共通テストに対応する数学の分野別の学習方法や対策、おすすめの参考書について詳しく解説しています。
情報が少ない中で合格に結びつけるには、最新の情報に従った分析と学習方法が大切です。共通テストだけではなく、同テストの学習方法をうまく二次試験にもつなげて合格を勝ち取りましょう!
「大学入試共通テストにおける数学の勉強法」についてざっくり説明すると
- 従来のセンター試験よりも難易度が大幅に上昇すると予想されている
- センター試験の対策ではなく、共通テスト用の学習方法が大切である
- 日頃から共通テストを意識した学習が効果的である
共通テスト数学の難易度や傾向
共通テストは試行調査の段階では「記述式」の導入なども検討されていましたが、今年度と来年度については、「全問マークシート式」という結論に落ち着きました。
ですが、「今までのセンター試験と変わりない」と考えていると、大間違いです。詳しい内容を見ていきましょう。
共通テスト数学の概要
科目について
数学を選択する受験生の多くは、「数学Ⅰ・数学A」「数学Ⅱ・数学B」を選択するでしょう。科目については、センター試験時代と変更はありません。
時間について
センター試験時代と比較して大きな変更点の一つが「試験時間」です。数ⅠAについては、センター試験より10分延長され、70分になりました。
なお、数ⅡBについては従来通り60分です。
問題の設置数
数ⅠA・数ⅡB共に、大問数は5つです。両科目とも大問1・2は必答問題、大問3~5は選択問題であり3問中2問を解答します。つまり、必答問題と選択問題の合計4問を解かなければなりません。
出題範囲
出題範囲については、下記の表のように、現在高校数学で学習する範囲からの出題です。
数学Ⅰ | 数学A | 数学Ⅱ | 数学B |
---|---|---|---|
数と式 | 場合の数と確率 | 三角関数 | 確率分布と統計的な推測 |
二次関数 | 整数の性質 | 微分・積分の考え | 数列 |
図形と計量 | 図形の性質 | 指数・対数関数 | ベクトル |
データの分析 | 図形と方程式 |
ただし、学習内容は上記の表の知識を問うものであっても、示されたデータからどの知識を問われているのかを素早く把握しなければいけないので、センター試験よりも注意が必要です。
なお、試行試験の際には「記述式」の導入が試みられていましたが、結果として見送りになりました。
センター試験との違いは3つ
まず、センター試験との大きな違いは3つあります。ここでは過去に2回行われた試行調査の問題を解いた経験を持つ人も、改めてセンター試験との違いを確認してみましょう。
数学ⅠAの試験時間が伸びる
先に述べたように、数ⅠAでは試行試験時は記述式を導入する予定だったのですが、結果として見送りになりました。ただし、その際の「思考力を問う」方針はそのまま継承したために、試験時間はプレテストと同じように70分のままで、中身を変えることで問題の難易度と解答時間のバランスを取っていると考えられます。
問題の形式が変わる
従来にはなかった「対話式」の問題文が登場し、プレテストで戸惑った人も多かったのではないでしょうか。
センター試験はある程度完成した数式の穴埋めに従えば解答を出せましたが、会話形式を取りつつ、より数学の本質的な問題への理解を問う形式なので、解法パターンの暗記だけでは対応しにくくなると考えられます。
問題のボリュームが増える
問題の形式が変わったことにより、問題文の中に直接関係ない知識も含まれているとの指摘があります。これらの情報の取捨選択をする必要も出てきたので問題文の読み込みに時間がかかり、従来は計算力やスピードで有利だった人でも手間取るケースが多く見られます。
結果的に、問題のボリュームはセンター試験よりも増えたと言えるでしょう。
試験時間が伸びる
センター試験時代は数ⅠAも数ⅡBも60分でしたが、共通テストでは記述式が見送られたにもかかわらず、数ⅠAは従来の試験時間+10分の70分で決定しました。
従来のセンター試験も「問題の量の割に時間が足りない」という指摘がされていたので、一部で「時間的にゆとりができるのでは」という希望的観測が流れました。ですが、プレテスト実施後のアンケートでは、問題形式の変化やボリュームの増加により50%以上もの生徒が「試験時間が短い」と回答しています。
上記のアンケートの結果を踏まえると、センター試験よりも解答時間はかなりシビアになったと捉えて、対策を立てる必要があるでしょう。
問題の形式が対話式
共通テストの実施に先駆けて、平成29年と平成30年度に実施された試行調査では、問題形式に大きな変化が見られました。
従来のセンター試験ではあらかじめ計算式が提示され、それに基づいて計算力や公式の運用能力を試す趣旨の問題が多く出題されていました。一方共通テストでは、対話形式の中で渋滞予測や測量などの日常生活に関する数学的事象のトピックが取り上げられています。
その中で公式をどのように利用するかを考える戦略的視点を問う設問が多く出題されるようになり、教科書の知識だけでなく、日頃から数学的思考が出来ているかが問われていると言えるでしょう。
思考力・判断力が重視される
もっとも、過去2回の試行調査以前から大学入試センターの公式アナウンスとして、「思考力・判断力」を重視していく方針は発表されていました。そのため、予備校などでは想定の範囲内の出題形式の変化であったと言えるでしょう。
具体的には、日常生活の事象の中でどの公式を利用できるかを考える思考力、表やグラフから必要な情報を的確に読み取る判断力について問う予想問題集は、予備校関連の出版社などから既に販売されています。
従って、新形式の試験については様々な情報が錯綜していますが、「共通テスト対応」と銘打っている参考書を既に利用しているのであれば、慌てなくても大丈夫です。
新形式についての演習を積みたい人は、これらを積極的に利用しましょう。
全体として難易度は上昇傾向
総論として、数ⅠA・数ⅡB共に難易度が上昇するのはほぼ確定であると言えます。実際に、過去のセンター試験の平均点は数ⅠAが60点前後、数ⅡBが50点前後で推移していましたが、試行調査では数ⅠAが30.74点、数ⅡBが36.06点と大幅に下落しました。
数ⅠAが記述式を除いた85点満点換算、現役高2生も含むテストである点を考慮しても、センター試験と比較して難易度はかなり上がると見て間違いないでしょう。特に、計算問題など従来得点源に出来たような問題が減少し、長文の問題を読ませながら丁寧に考えさせる問題が増加しています。
このため、普段から「解法パターンの暗記」に努めて解答スピードを上げて勝負をしてきた人には、かなり厳しい問題であると言えるでしょう。したがって、「センター試験の延長線」と考えていると、実際の試験では、従来と異なる解法にかなり手間取ると考えられます。
ここで、過去2回の試行調査のデータを確認してみましょう。
試験名 | 科目名 | ページ数 | 受験者数 | 平均点 |
---|---|---|---|---|
第1回試行調査 | 数ⅠA | 32 | 53,664人 | 非公開 |
第1回試行調査 | 数ⅡB | 22 | 15,950人 | 非公開 |
第2回試行調査 | 数ⅠA | 25 | 65,764人 | 30.74 |
第2回試行調査 | 数ⅡB | 24 | 4,935人 | 35.49 |
目指せ9割越え!共通テスト勉強のポイント
ここからは共通テストで高得点を取るためのエッセンスについてお伝えします。数ⅠAや数ⅡBいずれにも共通するポイントですので、得点のコツを押さえて数学全体の成績アップにつなげてくださいね!
解答へのアプローチに慣れよう
センター試験の時は、「公式に従った考え方」や「セオリー通りのアプローチ」に従えば、ある程度得点を伸ばすことができました。「解法パターンを多く暗記すること」に重点を置く勉強法を奨励するところも多かったでしょう。
ですが、共通テストに変わってからは日常生活の中の事象について、学校で学習する公式を適切に活用しながら、数学的なアプローチでの問題解決能力を重視するようになりました。
したがって、初見の問題であっても数学的思考を用いる習慣を身に付けておくと、本番で問題を解くヒントとなるでしょう。もっとも、あまり大げさに身構える必要はありません。
日常の学習の中で漫然と公式や解法を暗記するのではなく、公式の導き方や自分で数式を作ってみるなどの工夫をしていると、自ずと既存の知識の応用の仕方のコツを身に付けられるでしょう。
常にアウトプットするクセをつける
ある程度解答方法の道筋を示されていたセンター試験とは異なり、共通テストは解答を導くプロセスの知識まで問われます。そのため、日頃より解答プロセスを表現する習慣を付けておくことが大切です。
数学が得意な人は、簡単な計算は頭の中で瞬時に行い、計算プロセスをアウトプットしない人もいますが、今後はこの部分も得点源にしなければなりません。そのため、日頃から計算過程まで含めた解答を書く習慣を身に付け、「なぜそのように考えたのか」といったメモまで残しておくと、思考力の向上につながりやすくなるでしょう。
日常的な題材に関心をもつ
試行調査においては、「測量」「天秤」「渋滞」など日常生活の中における数学的な切り口の問題が目立ちました。共通テストでもこの方針は維持されると予測している教育関係者は多いでしょう。
そこで、授業で新しい単元を習う際には、「日常生活においてその単元がどのように応用されているのか」を考えたり、逆に数学的モデルとして捉える場合にはどのような知識が必要になるのかを考察する習慣を付けておくと良いでしょう。
例えば、「音」は周波数によって高さが異なります。ピアノの鍵盤などで1オクターブ上がると「基準の音の周波数の2倍」になりますが、この知識と常用対数の知識を応用すると、別の音の周波数(Hz)を求めることができます。
このように、ごく身近な素材でも高校数学の知識が活用できる場面もあるので、学校や塾の先生などにどのような知識が利用できるのか、尋ねてみるのも良いでしょう。
公式や定理の意味を正確に
センター試験までは、「公式の正確な利用の仕方」を問われる問題も多かったため、「この場面ではこの公式を利用する」という暗記中心の学習をする人も大勢いたでしょう。例えば、二次関数であれば「最大値・最小値を求めるために平方完成をマスターする」といった具合です。
ですが、共通テストでは「この公式をこのような場面で利用するのか」という思いがけないシーンでの知識の活用を求められることが増えるため、発想の柔軟性が問われます。
今後は、従来のように「この場面ではこの公式を利用する」という条件反射では対応できなくなると予想されます。「公式の定義や原則」をしっかり理解した上で、自分で思い出せるようにして、適用場面や最短経路での解法に応用する必要があるでしょう。
素早い解答の練習を
センター試験時代から指摘されていることですが、数学は他の教科と比較しても「時間制限がかなり厳しい」と言われています。従って、センター試験以上に素早い処理能力や判断理能力を普段の勉強法の中で磨かなければなりません。
「分かる問題は素早く正確に解答する」「難問は捨て問にして、総合点を上げるために各問の解答時間を調整する」などの演習は、一朝一夕で身につくものではありません。特に共通テストでは先に述べたように問題形式も変わるので、「詰め込み学習」に頼って点数を稼いできた人は要注意です。
大問別数学IAの対策勉強法
ここからは、過去2回実施された試行調査の傾向を踏まえながら、共通テストにおける数ⅠA と数ⅡBの勉強法とスケジュールについて、それぞれ解説していきましょう。
数IAの傾向と特徴
試行調査の結果を踏まえると、共通テストにおける数ⅠA の出題は、ほぼ全ての領域から出題されると予想されます。従って、どのような振り分け方をされても対応できるように、苦手分野をできるだけなくしておくのが高得点へのカギになるでしょう。
また、従来のセンター試験よりも文章量が多いので、問題文や図、グラフ・表などから出題の意図やキーとなる数字を素早く拾い集める処理能力が大切です。
以上の点を踏まえて、試行調査の出題傾向を確認しておきましょう。
第1問:集合と命題・二次関数・図形と計量
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集合と論証
-
2次関数
-
正弦定理
-
3に関連する問題
第2問:図形と計量・データの分析
-
三角比
-
データの分析
第3問:場合の数と確率 (条件付き確率など含む)
第4問:整数の性質 (不定方程式など)
第5問:図形の性質 (フェルマー点など)
なお、第1問・第2問は必須問題、第3問~第5問は3問のうち2問を選択する選択問題です。
【第1問】図を活用して素早く解き下す
試行調査の傾向を踏まえると、第1問では「数と式」「集合と命題」「二次関数」「図形と計量」など、数Ⅰの領域から出題される可能性が高いでしょう。
「数と式」については試行調査では出題されていませんが、それ故に出題される可能性は十分あります。その場合には、計算ミスをしないようにスピードに乗って最後まで正確に解くようにしましょう。
それ以外の部分については複雑な論理思考を求めるものもありますが、集合の「ベン図」、二次関数の「グラフの概形」、図形と計量の「sin・cos」などの数値情報など、思考と同時に手を動かして情報を整理することで、的確なイメージがしやすくなります。
これらの作業は正答率の向上につながりますから、日頃から情報のアウトプットを習慣づけておきましょう。
【第2問】計算ミスをケア
第2問は図形と計量、データの分析から出題されています。特に「データの分析」は小数点を交えた数値が頻出して計算が煩雑に感じるでしょう。
それだけ計算ミスが発生しやすい分野ですから、「問われていることはシンプル」である点を念頭に置いて、素早くかつ丁寧に解かなければなりません。
計算ミスがそのまま失点につながってしまうので、「小まめに式の変形をチェックする」「普段の演習などでケアレスミスのパターンを押さえておく」「最後に数値の代入をする」などの工夫が必要です。
【第3問】確率はパターンを集めよう
第3問は、確率から出題されています。確率は性質上解法パターンが決まりやすいので、条件さえつかめば、過去に解いた類似条件の問題から解法を推測できる可能性が高いでしょう。
たとえば、碁盤の目の区画における「最短経路の数」「重複組み合わせ」「同じものを含む円順列」などは、各種参考書でも頻繁に取り上げられるパターンです。
確率は問題のレパートリーがある程度決まっていますから、青チャートなどの参考書を通して、問題や解法パターンを収集してバリエーションを増やしておくと良いでしょう。
【第4問】整数は互除法と不定方程式を
第4問は、「整数の性質」を問う問題が扱われています。特に最大公約数を求める際に有用な「ユークリッドの互除法」を利用する問題、係数が整数であることを利用する「不定方程式」、整数に焦点を当てた最大公約数や最小公倍数の考え方を利用した問題などが出題されています。
特にユークリッドの互除法や不定方程式は、教科書によっては「発展問題」として扱われている場合であっても、かなりの頻出問題と言えます。これらの問題は解き方のパターンも決まっていますから、「正解しなければいけない問題」と位置づけて、しっかりと使いこなせるように練習しておきましょう。
【第5問】図形は公式の意味を確認
第5問は「図形の性質」からの出題です。この分野は特に内心・外心・傍心・重心・垂心のいわゆる5心や、その図形的な性質や意味の違いについて、正確に理解しておくのがポイントです。
例えば「外心」を取り上げてみましょう。外心の持つ性質として
- 3辺の垂直二等分線の交点
- 三角形の外接円の中心
- 3つの頂点から等距離にある
などが挙げられます。これらについて、証明などを通して理論的にも説明できるようにしておくと、定理の意味が体感しやすいでしょう。
応用的な内容にも目を向けよう
さらに、における中線定理(パップスの定理)や外心・重心・垂心を通る直線であるオイラー線などは発展的な内容として、教科書のコラムなどで扱われていることもあるかもしれません。ですがこのような応用的な問題も、図形における考察能力を測るのにちょうど良いレベルとして好んで出題される傾向は、過去のセンター試験などでも見られました。
よって、共通テスト後に難関国公立大や医学部などの受験を視野に入れているのであれば、二次対策も兼ねて、これらの発展的知識も身に付けておきましょう。
大問別数学IIBの対策勉強法
今度は、数ⅡBの対策方法について解説していきましょう。
数IIBの傾向と特徴
過去2回の試行調査の分析結果を見ると、数ⅡBもやはり全範囲から出題されるのはほぼ確定的であると言えるでしょう。ただし数ⅠA と異なり、こちらは第Ⅰ問と第2問の出題単元はやや流動的です。
また、第3問~第5問が選択問題である点は数ⅠAと同様ですが、大多数の人が授業でも馴染みのある「数列」や「ベクトル」を選択しています。第1問や第2問と同様に単元の順番の入れ替わりはあり得るので、どの単元からの出題なのかをしっかり把握しましょう。
平成30年における試行調査の出題範囲は、次の通りです。
第1問:三角関数・微分/積分・指数対数
-
三角関数
-
微分積分
-
対数
第2問:図形と方程式
1. 不等式と領域(線形計画法など)
2. 軌跡と領域
第3問:確率分布と統計的な推測
第4問:数列
第5問:ベクトル
【第1問】三角関数や微積は定義を確認
第1問は、「三角関数」「微分・積分」「指数・対数」からの出題でした。
三角関数
三角関数については単位円をベースに弧度法の考え方を問う問題でした。さらにその応用として線分の長さの変化をグラフ表記にした場合の解答は、「三角関数」という言葉にミスリードされないよう、しっかり問題の意図を把握する必要があります。
微分・積分
微分・積分は、導関数や三次関数の基本知識を踏まえた上で、原始関数を求めさせる問題や面積と積分の関係を答えさせる問題など、公式を微分・積分に利用する際の本質を問う問題が出題されました。
微分・積分の問題は正確で素早い計算能力も同時に求められますから、基礎的な計算能力も問われる問題だったと言えます。
指数・対数
対数の問題については「対数ものさし」という意表をついた問題に見えますが、真数や底についての正しい理解を試す内容も含まれていました。対数の性質やスケール感を正しく理解しているかどうかに加えて、問われている知識は教科書レベルでも、幅広い視点から捉えてほしいという出題者の意図を感じさせる問題です。
全体的に、定義の正確な理解や定理を自力で導く力が求められていたと言えるでしょう。
【第2問】図形と方程式は軌跡パターンを見抜く
第2問では「図形と方程式」が出題されています。日常生活に根ざした題材を切り口にして軌跡を求めさせたり、変数の範囲を決定させたりする出題が目立ちます。
もっとも、高校レベルで軌跡の問題として出題されるのは「直線」「円」「放物線」の3パターンのみです。したがって、いずれの軌跡の問題についても普段の演習を通じて解法パターンを押さえておくのがおすすめです。
解法パターンをある程度身に付けてさえいれば、後は計算力でクリアできる問題が多いので、この単元は参考書などで各パターンの解法指針を身につけるようにしましょう。
【第3問】確率分布は手をつけないのがベター
「確率分布と統計的な推測」については文系の大学や学部では出題されなかったり、学習ボリュームが非常に多いことから、学校の授業で取り上げられないケースがほとんどです。したがって、学校で「確率分布と統計的な推測」の分野について詳しく学習していなかったのであれば、手を出さない方が賢明でしょう。
数Bのベクトルや数列に対して苦手意識のある人が、「数Aの確率」の感覚で手出しをしたり、ネットなどの情報を鵜呑みにしてこの分野に切り替えようとするケースが散見されます。ですが、学校でじっくりと学習しないまま実戦レベルに仕上げるのはかなり困難でしょう。
【第4問】数列は最初を丁寧に
数列は、前の小問が正解できていないと次の解答に結びつかない問題が多いです。従って、基本的な問題に見えても初項を求める問題などは、慎重に解くように心がけてください。
また、漸化式は無数の組み合わせがあるように見えても、実際に問題として出題されるのは10前後のパターンしかありません。従って、パターン演習に持ち込むのが効率良く学習を進めるコツです。
さらに余裕のある人は未知の問題に遭遇した際に備えて、n=1,2,3…順次整数を代入して解く連立方程式からの係数の決定など、「マークシート式ならではの裏技」なども身に付けておくと便利です。
【第5問】ベクトルは誘導に乗って
ベクトルの出題は、2種類のアプローチ方法を提示されてそれぞれの誘導の途中経過も考察させながら、最終的にcosθの値を求めさせる問題でした。
ベクトルの問題は与えられた式から作図をして、そこからの
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ベクトルの分解・成分表示
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ベクトル質量の倍数を意味するスカラー倍(kの値)の決定
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内積公式を用いたcosθの値の算出
という計算の流れは、センター試験時代からのセオリーとして確立されています。
従って、この流れに従った演習を積み重ねておくのが肝要と言えるでしょう。
特に、空間ベクトルなどの方針が立てにくい問題は誘導に従うことで道筋が見えやすくなります。空間ベクトルでは計算量も膨大になり、自己流で解決しようとすると解答時間が足りなくなりますから、素直に問題文の誘導に従いましょう。
共通テスト数学の勉強スケジュール
それでは、これから共通テストの受験をする人はどのような学習方針を立てれば良いのでしょうか。学年や時期ごとの学習方法について、確認していきましょう。
高校1・2年生は公式の理解を
比較的時間のゆとりがある高1・高2のうちは、公式の定義や定理を自力で導けるようにチャレンジしてみましょう。既存の知識を活かしながら考えることで、数学的な論理や思考力を高められます。
試行調査を通じて、共通テストでは定理や定義の本質的な理解度を問われるのは明らかです。したがって、1~2年生のうちは暗記のみに頼るのではなく、日頃の学習の中で常に考える力を鍛えておくと受験に臨む際に大きなアドバンテージになるでしょう。
余裕がある高2生は別解探究も
また、「複数のアプローチ方法」を提示する傾向は共通テストでも引き継がれる可能性が高いでしょう。したがって、別解として提示される複数の解答のプロセスも理解する力を身につけると、得点に結びつきやすくなると考えられます。
1~2年生のうちに、友人と解法プロセスや変形方法を比較してみたり、効率の良い解法の探求をしたりするなど、試行錯誤を重ねて解法を掘り下げる習慣を身につけましょう。結果的に、その習慣が共通テストに対して有効な手立てになります。
高3春は個別2次試験対策を
試行調査を踏まえると、共通テストは計算力やスピードが重視された従来の「センター試験」から、国公立大学などの二次試験のスタイルに近い出題に変化すると考えられます。したがって、昨年度までのように「センター試験まではそれに対応した学習をしよう」と考えるよりも、最初から最後まで二次試験を意識した学習を継続すると、共通テストでも得点に結びつきやすくなるでしょう。
具体的には、チャート式など広い範囲をカバーする問題集を利用して解法パターンのバリエーションを増やしたり、教科書の発展的トピックまで読み込んでおくと効果的です。
高3夏は試行調査や共通テスト問題集を活用
今年度から始まる「共通テスト」は、現時点では試行調査が最良の過去問と言えるでしょう。したがって、共通テストがどのようなものか感覚をつかみたいのであれば、過去2回実施された試行調査を解くのがベストです。
この時点ではまだ点数が取れていなくても悲観する必要はありません。むしろ、共通テストの出題形式を把握して学習方針を立てるきっかけにできれば十分でしょう。
また、ある程度実力がありそれなりに回答できているのであれば、後述の共通テスト対策用の参考書などを利用して演習を重ねるのもおすすめです。
高3秋は共通テスト模試を受験
夏に試行調査の過去問などを通じて共通テストの出題形式に馴染んだら、秋はこの時期に実施される共通テストの模試を受験してみましょう。模試の受験目的は、現段階でどれくらいまで得点できるのか、志望大学の合格ラインまでどの程度ギャップがあるのかを把握することです。
模試を受験する場合には、より本番に近いデータを出せるように、駿台や河合塾など大手予備校主催の模試がおすすめです。
模試受験の際には、本番に近い雰囲気の中で、解答の順番や時間配分、余白利用の仕方などについて最適化を意識しながらテストに臨みましょう。
直前期は予想問題で時間配分をみがく
直前期は最後の仕上げとして、予備校各社の予想問題集を利用してひたすら演習に励みましょう。
演習を進めるうちに、自分の計算ミスの癖や問題文の読み間違えなどにも気づくはずです。それらを分析して、当日はそれを行わないように対策を立てておくのは、必然と言えます。
さらに難問の出題を予想したタイムプレッシャーを取り入れた演習を心がけるなど、本番で起こり得るさまざまなトラブルを想定し、それに対してどのように最後まで解答するかの戦略も練り上げて万全を期しましょう。
センター過去問の優先度は低い
時折メディアや動画で「センター試験の過去問を共通テストの対策に利用しよう」という情報が流れていますが、これらの情報は明らかにリサーチ不足です。
センター試験の過去問と試行調査を比較すると、センター試験は出題者の誘導に乗って正確な計算力を重視していました。一方共通テストは、解答へのアプローチや発想力を重視する傾向が強いです。
したがって、センター試験の過去問や問題集を利用した対策よりも、後述する新試験対応の参考書などを積極的に利用する方が実戦で役立つでしょう。
他教科とのバランスも考えて
今年はセンター試験から共通テストに移行する初年度であり、数学だけでなく他の教科でも出題形式や難易度の変更が予想されています。
数学は5教科の中でも特に対策を立てるのに時間を要する科目ですから、数学が苦手な人であっても多くの学習時間を割きがちかもしれません。ですが、その結果他の教科の学習が疎かになるようなことは避けたいものです。
受験者のほぼ全てが選択する英語も、やはりセンター試験時代からは大きくスタイルを変えています。こちらの対策も手を緩めずに、マクロ的な戦略を立てて総合点を伸ばせるようにしましょう。
対策は通信教育や予備校に頼るのも一つの手
共通テスト数学の対策は通信教育や予備校で効果的に行ってみてはいかがでしょうか?
1・2年生の方は、基礎の段階から共通テストの応用的な問題に通信教育や予備校を通じて触れる機会が設けられるので、早期から効果的な対策を打つことができます。
また、3年生の方は共通テストの得点を引き上げるうえで必要なノウハウを通信教育や予備校の場でしっかりと身に付けることができたり、実戦形式の演習機会が豊富に与えられる点が大きな魅力です。
以下の記事では、通信教育・予備校各社の特徴について詳しく解説しているので、こちらも併せてご覧ください。
目指せ満点!共通テスト数学おすすめ参考書
ここで、共通テストに対応済みのおすすめの参考書をご案内しましょう。
思考力・判断力・表現力トレーニング 数学ⅠA
共通テストが「定義」や「定理」の本質的問題を問う傾向が強いのは、既に述べてきましたね。そのように数学的思考を深掘りする問題が苦手な方におすすめなのが、こちらの参考書です。
問題演習のスタイルを取りながら、その解説パートにおいて定義の理解や導き方を詳しく解説しているので、抽象的な事例であっても非常に分かりやすく数学的思考が定着しやすいと言えるでしょう。また、誤った思考方法についても掲載されているので、自分が間違いやすいポイントの確認にも利用できます。
ただし、参考書として価値を感じるか読み物として楽しむか、人によって評価が別れる本でもあります。
実際の利用者の口コミは?
日常学習で陥りやすい盲点を、ある程度拾い上げたもの。活字は行間が広くとってあり、図やグラフもみやすい。 Amazonユーザーレビュー
共通テストの対策になればと思い購入しましたが、前述した通り、点数にはあまり反映されませんでした。この本から収穫がなかったのではなく、共通テスト対策本ではないから点数に反映されなかったのです。 Amazonユーザーレビュー
はじめての共通テスト対策 数学ⅠA
試行調査の問題をそのまま掲載した上で、詳細な解説を加えた一冊です。さらに、試行調査の過去問だけではなく演習用のオリジナル模試が含まれているので、傾向と対策を知った上で実力をつけたい人にぴったりでしょう。
従来のセンター試験に対する予想問題も高い評価を得ていたZ会の監修の参考書ですから、この本でもクオリティの高さは折り紙付きです。
実際の利用者の口コミは?
本問題集では試行問題にもしっかりとした解説が付けられています。オリジナル問題2回分もクオリティが高くZ会の長年にわたる指導のノウハウが随所に見られる仕上がりです。現時点ではかなり優秀な共通テストの対策問題集・予想問題集といったところでしょう。 Amazonユーザーレビュー
大学入学共通テスト 数学I・Aの点数が面白いほどとれる本
センター試験時代に累計40万部を突破した「志田のセンター数学」を共通テスト用にバージョンアップさせた問題集です。試行調査の分析を元に「パターン編」→「演習編」の2部構成の流れに乗ることで、限られた時間の中で高得点を獲得する実践的なテクニックを身に着けやすい点が、大きな評価ポイントでしょう。
特に、限られた時間の中で素早く解くテクニックを身に付け、難関大学狙いなどの高得点に結びつけたい人に奨励したい1冊だと言えます。
実際の利用者の口コミは?
解説はチャートより丁寧だしちゃんと試行テストからも問題持ってきてます 2割難問を捨てて8割取るという感じで割り切るなら十分だと思います Amazonユーザーレビュー
共通テストでしか数学使わない人はいいんじゃないかな。 正直数学の共通テストはセンターよりとても変わってるのでそこに着眼して作って欲しかった。 Amazonユーザーレビュー
大学入学共通テスト 数学II・B予想問題集 (KADOKAWA)
大学入学共通テスト 数学II・B予想問題集 (KADOKAWA)
こちらは、KADOKAWAから出版されている共通テストの予想問題集です。新傾向の問題を意識した「分析編」においては、解説が丁寧であるだけでなく、問題の背景まで踏み込んでいる点は評価する声も多いと言えるでしょう。
ただし、2回分の予想問題は問題数が解答用紙をオーバーするという点に難色を示すレビューも見られました。演習問題の質そのものは評価する声が多いので、演習用として利用するのがおすすめです。
実際の利用者の口コミは?
予想問題には試行問題を参考とした類題が乗っている。また、解答解説がとても詳しくわかりやすい部分はとても良い。しかし、他レビューにもあるように予想問題では解答用紙をオーバーしたり、試行問題と難易度はあまり変わらないものの、解答する問題数が多い印象を抱いた。 Amazonユーザーレビュー
共通テスト問題研究 数学I・A/II・B (教学社)
いわゆる「赤本」でお馴染みの教学社からも、共通テスト対応の問題集が販売されています。センター試験の過去問も収録されていますが、長年多くの受験生に信頼されてきたシリーズですから、解説の信用度は非常に高いと言えるでしょう。
新形式の対応問題は、試行調査2回分+オリジナル問題1題が収録されています。ただし、センター試験の過去問については出題形式が変わりますから、その点を踏まえて「役立たない」というマイナスの声もあります。
総括としては、本番に近い雰囲気をつかみながら演習を重ねたい人におすすめの参考書だと言えるでしょう。
実際の利用者の口コミは?
数字が出て終わりだったセンターを数字が出てから始まりの共通テストにビルドアップしていく力が本来求められる学力だと私は考えます。 Amazonユーザーレビュー
試行調査を見る限り、全く異なるテストになると考えた方がよい。一回分の模試のために、この価格を出す気があるかどうかでしょうか。 Amazonユーザーレビュー
その他にも、高校生におすすめの数学の参考書について知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
「大学入試共通テストにおける数学の勉強法」についてまとめ
「大学入試共通テストにおける数学の勉強法」についてまとめ
- 共通テストは傾向が変わることを踏まえて、日頃から数学的な本質に迫る思考法を身につけよう
- 解法をただ暗記するのではなく、様々なアプローチを考えることが新制度対策に直結する
- 1~2年生は、早くから共通テストを意識して数学に慣れ親しむ訓練をしよう
試行調査のテスト内容や結果を見て、不安に感じた受験生は非常に多いでしょう。ですが、センター試験時代からこのようにテスト形式の大幅な変更は何度か繰り返されており、問題の難易度が変わっても、それに応じて合格ラインも上下してきました。
逆に言えば、新試験制度に変わっても、それに対応できるだけの努力をすれば合格を勝ち取ることは可能なのです。
残り時間が少なくても、最後まで諦めないことが合格の秘訣です。もう一度自分にできることがないか見直して、合格をつかんでくださいね!