【体験談】駿台での浪人はどう?高卒コースから東大を目指した元駿台浪人生が語る

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浪人することになったら、どの予備校を選びますか?

筆者の私は、東大に落ちて浪人することになり、駿台を選びました。

今回は、実際に私が駿台での浪人生活を通じて感じたことや経験を体験談として公開します。

駿台の公式サイトには載っていない、受験生目線での情報や感想も公開していますので、公式サイトと合わせて体験談も予備校選びの参考の一つにしていただたら幸いです。

筆者のプロフィール

矢野雄己。1997年生まれ。2016年に岐阜高校を卒業し東京大学理科一類を受験するも不合格。浪人期から上京し、東京の駿台御茶ノ水校にて1年間の浪人生活を経て、2017年に東京大学理科一類を再受験し、合格。

東京大学理科一類から進学振り分け制度にて工学部物理工学科に進学。工学部物理工学科では固体物理の研究に取り組む。同学科を2021年に卒業。卒業論文の題目は『θ(ET)2RbZn(SCN)4\theta - (\mathrm{ET})_2 \mathrm{RbZn}( \mathrm{SCN})_4における電荷ガラスの結晶化のサブミクロン分解能ラマンイメージング』。

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東大に落ちて予備校で浪人することに

東大に落ちた時の得点開示

2016年の前期東大試験で東京大学理科一類に落ちました。3点足りませんでした。

「リスニングのあのテキトーに打ったマークがあと2つ合っていればなあ」などと、意味もないタラレバを思ってしまうような点差です。

合格発表はインターネットで確認しました。見事に番号が飛んでおり、落ちたなあと一瞬冷静になりますが、徐々に悲しさがこみ上げてきます。特に同期の友人の合格を素直に祝えない時が苦しかったです。

人生初の挫折でした。

東大以外を考えられなかったので、東大を目指して浪人することにしました。

合格発表は3月10日で、その日から私は虚無感に包まれていました。当然、予備校のことを考える元気なんてどこにもありませんでした。「浪人」という実態のわからない残念な未来を控えながら、新学期が始めるまでの時間を遊んで楽しむしかないのです。

お手本通りの「現実逃避」です。予備校選びなどは全て親に任せました。

予備校は駿台に決める

ある日突然、親に「君は東京に行きなさい」と言われます。親としては、私は東京に行って浪人するのが良いと考えていたようです。

東京大学に行きたかった私には都会志向があったので嬉しい話でした。親の提案にありがたく乗って、東京の予備校に行くという方針にします。

その後、親が「駿台が良いのでは」と提案してくれます。ぶっちゃけこの時は全て親頼みでした。自分で考える気力がどこにもなかったからです。

実際に東京に行き、駿台の校舎を見学しました。東大の合格実績に非常に優れた予備校だとわかり、駿台三号館に通うことを決めました。いわゆる「駿茶(すんちゃ)」です。

駿台の寮生活

浪人中の東京での生活は寮生活でした。地方から上京して浪人する学生向けに、駿台が寮生活を含めた年間パッケージを提供しているのです。

私が住んだ寮は本八幡(千葉県市川市)という地域にありました。駿台お茶の水校がある「御茶ノ水」駅まではJR総武線で乗り換えなしの1本。朝の混雑時間でも25~30分で移動できます。

ただし朝のピーク時(7:30~8:00)の満員電車は半端ないので、覚悟しましょう。

本八幡には飲食店も多く、学生には住みやすい地域だと思います。

寮生活はストレスになる

駿台が提供する寮は地方の学生向けの寮なので、学力レベルや志望校は様々です。正直にいうと、これが相当しんどかったです。

親元を離れて上京したことでテンションが上がってしまった学生たちが群がり、非常にうるさい環境でした。

夜は部屋にこもって自習をしたり、その日の授業の復習をしたり、次の日の授業の準備をしたりする時間に使うのが生産的です。しかし、寮の雰囲気はどちらかというと正反対で「授業から開放された。明日の授業の時間まで騒いで遊ぶぞ!」という感じでした。

寮長も統率力に乏しく、昼間には夫婦で近隣のパチンコ店に行っているような感じでしたので、頼りにはなりませんでした。

実際、治安も良くなく、未成年の飲酒も横行していました。

「くだらないな」と思ってスルーすれば良いのですが、浪人期はどうも気が尖っているので、そのような周囲の些細な秩序の乱れが非常にストレスフルに感じてしまうのです。

寮は「東大を目指した意識の高い軍団」というわけではなく、ヤンキー高校のイメージが近いです。

今でも「寮生活の秩序がもっと保たれていれば…」と残念な気持ちになります。

寮生活のメリットは食事

寮生活では朝と夜の2回、食事が提供されます。食事をさぼりがちな私にとって、決まった時間帯に食事が出てくるというシステムはありがたいものでした。

実際、このおかげで食生活は大きく乱れる事もなく、休日に生活リズムが乱れるということもなかったように思えます。

浪人生は体力勝負の部分もあります。食事は規則正しく取るようにしました。

駿台のコースとクラス分け

駿台の浪人生には、授業コースが複数用意されていて、「通常コース」「演習コース」に分けられます。私は、親が提案してくれた「演習コース」を選びました。

現役時には東大模試でA判定が続いていたので、基礎固めを重視する「通常コース」より、問題演習で実力を伸ばす「演習コース」の方が私には向いていました。

さらに演習コースは「X・Y・Z」の3段階のクラスに分かれます。学力レベルでX→Y→Zの順番でクラス分けが行われるのです。

理系であればSX/SY/SZ、文系であればLX/LY/LZというクラス名になっています。

クラス分けの学力は、前期授業開講の直前に行われるテストで決まります。クラス分けテストは3月末〜4月頭に駿台三号館にある広い教室で実施されます。このテストを受験しないと、どれだけ頭が良くてもZクラスに振り分けられます。

試験の難易度はそれほど高くないです。浪人生しかいないので、そこで東大レベルの問題を出しても差がつかないのです。実際には進研模試くらいのレベルだったかなと思います。

私は少なくとも難しいとは感じませんでしたし、途中退室していた生徒も多かったように記憶しています。

結果、私はSXクラスにクラス分けされることになりました。

駿台の前期授業

初めての授業でSXクラスの教室に行きます。教室は高校の教室くらいの広さで、そこに50人ほどの生徒が集まっていました。したがって隣との距離は近く、通路は狭いです。

浪人生向けのコースなので、周りは全員が浪人生です。

そこで私は初めて知ったのですが、このSXクラスはどうやら日本中の駿台で一番頭がいい理系クラスらしいのです。事実関係はともかく、初回授業で担任がそう言ったのです。

疑い深い言葉でしたが、実際に前年度のSXクラスの合格実績を聞くと、ほぼ全員が東大(or難関大医学部)に合格していました。本当に、ほぼ全員です。

ただし、この合格実績は「後期にSXクラスだった人」の実績です。前期と後期の間で1度だけクラス分けがあり、演習コースの全員でクラスの総シャッフルが行われます。そのクラス分けは前期に行われた模擬試験の成績の合計点順にクラス分けされます。

私は初日の授業日に「後期にSXクラスにいることは東大合格を意味する」と理解し、後期にSXクラスに残留するために必死に勉強することを目標としました。

日本一のクラスとはいえ、授業の内容やテキストは基本的な事も多かったです。師曰く「浪人したのは基礎を疎かにしたから」ということらしいです。※なお、駿台では先生のことを「師」と書く習慣があるようです。

駿台を代表する超有名講師の授業が並ぶ日常は退屈ではなく、学ぶことばかりでした。

SXクラスの方がSYクラスよりも有名講師の授業が多めで、そういった恩恵も受けることができました。そう考えると、SXクラスの合格実績はある意味必然とも言えそうです。

徐々にクラスに友達ができるようになります。SXクラスにいる生徒の多くが「ギリギリ落ちた」という人なので、仲間意識が芽生えるまで時間はそうかかりません。

前期の生活リズム

前期の授業があった時期の生活リズムを書いておきます。

授業のコマ数が日によって違うので、平均的なスケジュールだと思ってください。

時間 行動
7:00 起床
〜7:30 朝食(寮の食堂)
〜7:50 シャワー等・支度
7:50〜8:20 本八幡→御茶ノ水(JR総武線)
8:30〜 ホームルーム
8:40〜 1限
9:40〜 2限
10:40〜 3限
11:40〜 4限
12:30〜 昼休み(昼食)
13:30〜 5限
14:30〜 6限
15:30〜19:00 自習室で復習・予習
19:00〜19:30 御茶ノ水→本八幡(JR総武線)
〜20:00 夕食(寮の食堂)
〜23:00 自室で勉強(主にその日の復習)
〜24:00 自由時間・就寝

駿台の授業は50分授業でした。

私の高校は1コマ65分だったので、かなり短く感じます。その分、1日6限まで複数の科目の授業を受けられるというメリットもあります。

授業の時間も含めると、1日のほとんどが勉強の時間になっています。平均で見ても、1日13時間くらいは勉強していたのでしょう。当時は1日何時間勉強したとか、あまり意識していませんでした。勉強すること以外、することがほとんどなかったからです。

電車での移動中は英語のリスニングをやるか、数学の整数問題を頭の中で解いていました。

電車の移動は往復で約1時間もありますから、ボーッとするにはあまりにも惜しいです。

当時は「落ちたのだからこれくらいはやって当たり前」だと思っていましたし、逆に勉強していないと心が落ち着かずとてつもない不安に駆られるという状況でした。

実は、勉強している時間は気持ちが楽だったのです。こういった規則正しい生活を送れる点も寮のメリットかもしれません。

勉強の割合としては復習が多めでした。内容は基礎的なことが多く、復習に時間はかからないかと思いきや、それを完璧に自分のものにするのにはやはり一定の時間は必要です。

前期の基礎固めが後期に役立ちます。

模試が楽しい

前期の間は、受験期に詰め込んで仕上げた経験の分だけ、現役の三年生と比べると成績は優秀です。そのため、模擬試験を受験すると全国の上位を比較的簡単に狙えてしまいます。

浪人して1年余分にやっているので、春〜夏の時期にはこれくらいの成績は取れても何ら不思議ではありません。

現役生はまだこれから仕上げてくる時期なのでその時点での成績には価値はありません。しかし、東大に落ちて自尊心がボロボロになっていた私や周りの浪人生にとって、その成績は心の救いになっていました。

駿台の夏季講習

浪人生の夏休みは7,8月です。およそ2ヶ月あります。

この間、夏季講習があるだけで通期の授業は一切ありません。

つまり、夏季講習を1つも取らなければ夏休みです。大学生と同じ、何も宿題がない夏休みです。

私は夏季講習をまとまった時期に受講し、実家に帰省する時期を作るようにしました。8月の中旬〜下旬に帰省し、その1週間は一切勉強せず地元の高校同期と遊んでいました。背徳感がたまりませんでした。

担任との約束で、夏休みの間で600時間くらい勉強することになっていましたが、実際に勉強したのはせいぜい400時間くらいだったかなと記憶しています。今思えば、600時間は無理があります。

夏休みは気分転換にバッティングセンターに行ったり、東京ドームに野球観戦に行ったりしていました。浪人生にも人権はあるのです。

夏季講習でとった授業で面白かったのは「integrative英語」(小林俊昭師)です。小林俊昭師の授業は通期の授業で受けられなかったのですが、話が非常に面白く毎日が楽しみでした。話術の天才かと思います。

そのほかにも、講座名に「東大」と入った理系科目の講座は全て受講した記憶があります。「お高い」価格でしたが、浪人期にケチは言ってられないので仕方がない出費です。

気分転換も含めながら、多くの時間を駿台の自習室で過ごしました。前期のテキストを復習したり、夏季講習の予習をしたり、やらなければいけないことは多くありました。

友達も自習室によくきていたので、寮の部屋に引きこもって勉強するよりは自習室にきて勉強した方が良かったです。

駿台の後期授業

2ヶ月の夏はあっという間に過ぎ去ります。

9月に入るとすぐに後期授業が始まり、気持ちが入れ替わります。

後期の生活リズムは前期と大きく変わりません。基本的に1限があり、夜までひたすら勉強です。勉強以外は許されない時期になってきます。

クラス分け

前期の模試の合計点順で再びクラス分けされます。

クラス分けの対象になる前期の模擬試験は以下の3つです。

  • 駿台記述模試(4月実施)
  • 駿台全国判定模試(5月実施)
  • 駿台全国模試(5月実施)

いずれも記述式で、800点満点です。合計の2400点満点での順位が評価対象です。

私は前期の模試の成績はいずれもかなり順調でした。

総合成績が演習コースの中で5位で、上位50人に入ることができました。無事にSXに残留することができました。

前期の駿台模試の学業成績表

前期の小さな目標を達成できました。

なお、全体1位の生徒はSXクラスの友人だったのですが、2100点くらいあった気がします。恐ろしいです。

上位50人がSXに入るので、ボーダーラインにいた友人はとてもヒヤヒヤしていたようです。結果、前期と後期でSXのメンバーはおよそ10人程が入れ替わりましたが、顔ぶれが大きく変わったわけではなかったです。つまり、前期のクラス分けにもある程度の精度はあるようです。

また、前期の成績が上位数人に入ると、駿台から以下のような賞状をいただくことができます。表彰式が8月下旬に行われ、表彰対象者のみが参加します。

前期の駿台スカラシップ表彰の賞状

賞状にもあるように、国立理系スカラシップ生・コース別表彰生として

  1. 奨学金
  2. 記念品

の2点をいただきました。

奨学金は前期の授業料の半額が口座に戻ってきました。当然ですが、自分の口座に戻るわけではなく親の口座に戻ります。せめてもの親への償いといったところです。

また記念品は電子置き時計で、これは生徒に手渡しされます。寮の部屋に置いておきました。置き時計はデザインがダサいのでさほど期待はしない方がいいですが、時間の表示が大きくて見やすいです。

秋模試に向けて

後期になると、演習コースの授業内容は本格的に演習化します。前期のような基礎的でやや甘ったるい授業はなくなります。毎日のように授業の先頭で「入試当日〜それよりもやや難しい?」レベルの問題を解かされ、そのあとに解説を聞くという流れです。かなり実力がつくと思います。

10月下旬から東大の「秋模試」が各予備校で順番に実施されていきます。

11月に入るにつれて教室がピリピリし始めます。先生もピリピリし始めて、授業中にキレ始める先生が出現します。自習室もどことなくピリピリし始めます。ライバル意識や、センター試験への焦りが生まれてくるのです。

11月頃の駿台の自習室

この写真は11月ごろに撮影された私の自習室での様子です。友人が撮影してくれました。なぜ撮影してくれたんだろう。ともかく、姿勢は前のめりでかなり悪いですが、頑張っているように見えます。ピリピリ感が少し伝わってきます。

各予備校から秋模試の結果が順番に返ってきます。私の結果はそれほど良いものではなく、河合・駿台がどちらもギリギリのA判定でした。

前期には全国順位1桁を記録していたのにこの順位の下げ方はヤバイ、と相当焦ります。去年とあまり成績や全国順位が変わっていないわけですから、メンタル的にも相当きていました。

「今年もまた落ちるかもしれない」という不安で頭がいっぱいになります。今でも覚えていますが、それで眠れない夜もありました。

後期の授業は11月いっぱいでほとんど終わりです。つまり、9,10,11の3ヶ月しかありません。その間に秋模試を含め、色々なイベントがあるためあっという間に過ぎ去ります。

気がついたら12月、冬季講習とセンター試験対策の時期です。

駿台の冬季講習

駿台では12月から冬季講習が始まります。

この時期は不安に煽られて、いろいろ講座をとりたくなるのですが、グッと我慢して最小限に必要な講座に絞りました。

というのも、あまりにも後期の授業内容が充実しているので、わざわざ冬季講習を多く取る必要がないと感じていたからです。冬季講習で手元の教材を増やすよりは、後期の授業で解いた大量の問題を全て解けるようにする方が合理的だと考えていました。

冬季講習は苦手だった化学と、不安が残る数学だけに絞り、そのほかは手元にあったテキストやプリントで冬を凌ぐ方針です。

また、この時期からはインフルエンザなどの風邪にはよく気をつけました。手洗いとうがいはこまめにやっていた気がします。よく言いますが、体は資本です。体調管理も含めて受験に臨む必要があります。

受験は総合勝負です。実力が足りなくても本番に火事場の馬鹿力で実力以上のものを出せたら勝ちなのです。実力が足りていると自分で思っていても、当日に点数が悪ければそれは実力不足です。

「実力は足りなかったけど受かった」ということはあっても、「実力は足りていたが落ちた」ということは(天変地異のような不可避な外的要因を除けば)ありえないのです。

体調管理も含めた総合勝負だと心得ましょう。

12月は東大対策5割・センター対策5割くらいのイメージでやっていました。12月末くらいになると、センターの比率を少しずつ上げていきました。

今でも覚えていますが、大晦日も当然のように勉強していました。12月31日はセンター現代文の対策をしていて、問題を1セット解き終わったら2017年に変わっていたのを覚えています。

浪人生に「あけおめ」はないのです。

明けたら、怖いのです。

おめでとう、とは何事でしょうか。

センター試験はもう来週ですから。

1月になってからは、センター対策10割で勉強しました。特に国語と地理は1年中放置していたので解き方の再確認をするために多くの過去問をこなしました。

センター初日に地理、国語から入るので、この出だしで万が一つまづくと精神的に参ってしまうだろうと思っていました。

物理、化学でもセンター特有の変な問題に対応できるよう、直近数年分の問題は全て解いたと思います。

予備校のセンター問題集は使いませんでした。本番直前ですから、過去問を使うのが最も効果的だと思います。

センター試験

駿台の寮にいる浪人生のセンター試験は2パターンに分かれます。

地元に帰って受けるか、寮の近くの会場で受けるか、です。

自由に選択することができます。私は地元には帰らず、寮の近くの千葉県の会場で受験しました。

理由は、東京から地元に移動することで

  • 風邪を拾う可能性がある
  • 普段と環境が変わることになる
  • 雪で移動が不便な可能性がある
  • 試験の1日目と2日目の間に誰とも会いたくない
  • 実家に帰って家族の顔を見ると不用意に感情が揺らぐ危険性がある

というデメリットが多く思いついたからです。むしろ帰るべき理由がありませんでした。

センター試験の自己採点は2日目が終わってからすぐに行いました。

手応えも普通で、結果もその通りに普通でした(リスニング抜きで合計806点)。

元々、センター試験があまり得意ではなく、9割付近(810点)をとれればいいかと考えていました。

東大ではセンターの点数は900点が110点に圧縮されるため、対策を重ねて810点が850点になっても実はあまり影響がないのです。

ですが、クラスメイトのセンターの結果を聞くと850点付近の友人がいたので、やはり焦ります。さすが駿茶SXだなと思いながら「センター試験で周りに出遅れたのではないか」と不安な気持ちになります。

理科一類の志望を理科二類に下げようかなと一瞬迷います。例年、理科二類の方が理科一類よりも合格最低点が低い傾向が続いていたからです。

迷い始めるとキリがないと思い、親と一緒に駿台のクラス担任に相談します。その面談のために親はわざわざ地元から東京まで来てくれました。親も親なりに、センターが終わってかなり不安になっていたのだと思います。

担任とよく相談して、理科一類の志望を維持したまま二次試験に挑む覚悟を決めます。

そもそも大学に進学して学びたいことは物理・工学系でしたし、生物や化学への興味は薄かったです。加えて、センターの点数も9割付近であり悪くないことと、浪人中の模試の成績を見て、十分に理科一類を狙えると背中を押してもらいました。

自分でも理科二類に変更する必要はないことなど内心わかっていたのですが、毎年SXクラスのほとんどの浪人生を東大に送り込んできた駿台の担任から太鼓判を押され、親子ともに不安な気持ちが一掃されました。

理科一類を目指して、残りの一ヶ月の浪人生活を頑張ります。

私立受験

2月の上旬〜中旬に私立受験があります。

私立受験の意味合いとしては

  1. 滑り止め
  2. 二次試験の練習

があります。特に「二次試験の練習」というのは大事で、東大二次試験をイメージしながら挑むことにしました

駿台の担任と「どこの私立を受験するか」について相談した結果、

私は

  • 慶應義塾大学 理工学部 学門A
  • 早稲田大学 先進理工学部

の二つを受験しました。

前者の「慶應義塾大学 理工学部 学門A」は現役時に合格していました。そのため、昨年合格した大学への二度目のチャレンジとなり、かなり楽な気持ちで挑むことができました。

早稲田大学は現役時には受けていませんでしたが、浪人には「後がない」のでとりあえず受験してみることにしました。

いずれも試験中に十分な手応えがあり、合格したと思いました。

合格通知は東大二次試験の直前にくるのですが、万が一の場合にはメンタルに相当な支障をきたすと思い、東大二次試験が終わるまでは私立受験の合格発表は見ないようにしました。

繰り返しになりますが、東大受験生が私立大学を受験するときに意識するべきことは、東大二次試験をイメージすることです。

私の場合には

  1. 前日に近くのホテルに宿泊すること
  2. 科目の間に誰とも会話をしないこと
  3. トイレに行く時間のリズムを確認すること
  4. 持ち物や机の上に置くべきものの確認をすること

を意識して取り組みました。

実際、ある程度は練習になるかなと思います。

東大二次試験

いよいよ東大二次試験です。精神的にもピリピリの限界に達します。

2月の過ごし方

日程の間に私立受験や最終模擬試験などが入りますが、基本的には東大のことだけを考えて過ごす1ヶ月です。

この時期まで駿台の自習室にはボチボチ行っていましたが、ついに移動時間が長いことすらも我慢できなくなります。

この時期は毎日「模擬東大二次試験」を自分でやっていて、スケジュールが分単位で詰まっていたからです。

移動する余裕がありませんでした。

実際に、直前期は駿台の自習室にはあまり行かず、以下のスケジュールで動いていました。

数学を頑張る日のスケジュール

時間 行動
7:00 起床
〜8:30 朝食・支度等
9:30〜11:10 国語の過去問(100分)
〜12:00 昼休み(昼食)
13:00〜15:30 数学の過去問(150分, 6題)
〜16:30 採点+反省
17:00〜19:30 数学の過去問(150分, 6題)
〜20:00 採点+反省
〜20:30 夕食(寮の食堂)
〜24:00 数学の解き直し(全12題)
〜24:30 就寝

過去問は全て寮の自室で取り組んでいます。

数学に重点を置いて取り組む日は「二次試験1日目」というイメージで勉強していました。

ポイントは

  • 朝に国語(当日と同じように)
  • 数学の過去問2年分
  • 夜に全12題を解き直して完璧に

という点です。その日に過去問を2年分消化できるようにしました。

「直前期に数学は伸びない」というのは嘘で、普通に伸びます。

夜の「数学の解き直し(全12題)」をする時点では、すでに解答が頭に入っているため、思考過程や計算手順を再確認しながら、何も見ないで満点解答を再現することを意識しました。

理科と英語を頑張る日のスケジュール

時間 行動
7:00 起床
〜8:30 朝食・支度等
9:30〜12:00 理科の過去問(150分)
〜13:00 昼休み(昼食)
13:00〜15:00 英語の過去問(120分)
〜16:00 採点+反省
17:00〜19:30 理科の解き直し(150分)
〜20:00 夕食(寮の食堂)
20:00〜22:00 英語の解き直し(120分)
〜24:30 就寝

理科に重点を置いて取り組む日は「二次試験2日目」というイメージで勉強していました。

ポイントは

  • 朝に理科(当日と同じように)
  • 英語はリスニングも含めて120分で
  • 理科も英語も必ず解き直しをする

という点です。

英語の自己採点は難しいです。

英語は大問の数が多く、臨機応変に解く能力が必要だと考えていました。120分という決まった時間の中で得点を最大化するような時間配分ができたか?という点を重視して取り組んでいました。

また、英作文で「こんな表現が今かけたらいいのに…」と試験中に思った事は全て試験後に調べ、暗記しました。英作文は暗記科目です。かなりの数の短い英文を暗記していたので、それをいかに使って「速く・正確に」書くことができるかを重視していました。

このように英語の過去問演習では、「自分が思うように事を運べたか」という手応えを何よりも大事にしていました。そういう手応えがあれば、80点付近には乗ると思っていましたし、90点以上はかなり難易度が高く現実的でないので、無理して狙う勉強はしないと決めていました。

理科は合計80点を目安に取り組みました。イメージとしては「物理45点、化学35点」の80点をボーダーラインだと思っていました。化学が苦手だったので、できるだけ物理に時間を割いてボーダーラインを目指すようにしていました。

直前期はひたすら過去問演習

浪人すると、ほとんどの問題集を制覇してしまします。そのためどうせ二巡目にするくらいなら…と最終的には東大の過去問にたどり着きます。

私は特に東大数学の過去問を重点的に取り組みました。数学は失敗したときのダメージが最も大きく、また成功すれば合格がぐっと近づく、運命を分ける科目だからです。

具体的には、過去20年分の過去問を2周しました。上述のように、過去問を解いた後は毎日12題を総復習していたので、結果的には過去20年分の東大の過去問がほぼ完璧に頭の中に入っていたということになります。

これは今振り返っても非常に良かったと思います。過去20年分を完璧にすることで

  • 当日のパターンや流れが脳に染みつく
  • 解法のパターンの全通りが自分のものになっている
  • 危険な問題を察知する能力が身に付く
  • 落としてはいけない問題がどれかわかる

というメリットがあります。

対策に時間はかかりますが、どれほど時間をかけてもいいほど、理系の受験生にとって数学は大事な科目です。

できれば過去20年分の東大の過去問を完璧にしてしまいましょう。

二次試験当日

いよいよ東大二次試験の日になります。

東大前期試験の受験票

私を含め、理科一類・理科二類は本郷キャンパスが試験会場です。

前日に御茶ノ水〜本郷キャンパスの間にあるアパホテルに宿泊しました。前日は本郷キャンパスまでの道順を確認し、試験会場の建物を眺め、キャンパスの中を散歩しました。

夜はできるだけリラックスするために湯船に入り、暗記事項の最終確認をします。

前日は過去問を解くといったようなことはせず、体力と気持ちの整理を心がけました。

前日に勉強しないのは不安になりますが、それで点数は大して変わらないと割り切りました。

試験当日は少し緊張しましたが、去年より確実に実力が上がった手応えを感じていました。

初日の数学の出来栄えに、模試では感じたことがない手応えを感じ、今年は合格するかもと思いました。

2日目も大きく失敗することもなく、理科・英語ともに思ったように事を運べたので、英語が終わった瞬間に今年は合格したと思いました。

本郷キャンパスからスキップをしながらウキウキでアパホテルに帰りました。

合格発表

予備校の解答速報を見て不安に駆られたり、試験から時間が経つにつれて実は間違えたんじゃないかなどと心が病んだりしました。

試験が終わってから合格発表までは地獄のような時間です。

毎日毎日、自己採点を繰り返していました。

そんな日がただひたすらと流れ迎えた合格発表当日の3月10日、本郷キャンパスで合格発表を確認し、合格していました。

報われたと思いました。

辛かった時期のことを思い出し、涙が止まりませんでした。

浪人生活は万事順調というわけではありませんでした。寮の環境は最悪だったし、全国順位は春から冬にかけて少しずつ下がっていきました。この日は駿台での浪人生活の全てがフラッシュバックしてくるような気分でした

なお、この年も駿台のSXクラスのほぼ全員が東大や難関大学医学部に合格しました。理科三類も4,5人ほど含みます。

一年を通じて、駿台の浪人クラス(SX)は私にとっては良い環境だったなと思います。

大学に入ってからも交流がある友達を何人か作ることもできました。

浪人の選択は間違っていなかった

まず前提として、現役で合格するのが一番いいです。間違いなくそうです。

浪人すると、精神的に病みますし、家族にも不幸な思いをさせてしまいます。

加えて、浪人にはお金がかかります。東京に上京して浪人するなら尚更です。

つまり、浪人を決めた段階では誰も幸せにはなっていないです。強いて言えば予備校産業は喜んでいるかもしれませんが。

現役で東大に落ちたとき、私には二種類の道がありました。

  1. 慶應に進学する
  2. 浪人する

どちらが正解とか、どちらにするべきだとか、一般論はありません。

ただ、当時の私には「どうしても東大じゃなきゃ嫌だ」という気持ちは確かにありました。

慶應に進学するいう道は、その自分の気持ちに反するものでした。

一方で、慶應も魅力的な大学です。慶應に行けば、東京に上京もできて、浪人する必要もありません。浪人するよりもずっと楽な選択です。

早く次のステップに進むには慶應に行けば良い。

そう思うこともありました。

私は

  • 「東大じゃなきゃ嫌だ」を優先するのか
  • 「早く次のステップに進む」を優先するのか

という天秤によって、進路を決めました。

当時の私は前者が大事だと判断しました。

一年くらい追加で頑張ったらいいと思う、そう自分を納得させました。

金銭的に周りの環境が私のわがままを許すなら、もう一回努力して挑戦したいと思いました。

ただし、浪人生活は必ずしも報われるとは限りません。

私がこうして浪人して良かったと思っているのは、合格したからです。

「浪人した結果、合格した」という事実を踏まえて「浪人して良かった」と思っているだけです。

「浪人すれば報われる」という考え方は甘すぎると思います。

浪人した結果、不合格だった場合にも「浪人すれば報われる」と言えますか?

私は言えません。

浪人するべきか、進学するべきか、答えはありません。

それでも、自分が後悔しない道に進むのが良いと思います。

進学した方がいいと判断したら、そうするのがいいと思います。浪人生活は甘くないからです。

浪人した方がいいと判断したら、そうするのがいいと思います。学歴は一生残るからです。

どこまでいっても、受験は結果論です。

浪人で点数は58点アップ

東大の合格者の得点開示は4月中旬に届きます。

東大に合格した時の得点開示

駿台で浪人した結果、このように点数が変わりました。

科目 現役時 浪人時
国語 47 51
英語 67 73
数学 48 84
物理 41 33
化学 27 47
合計 230 288

合計で58点アップし、ボーダーより結構上のところで合格できました。

1年余分にやったので、自慢はできません。

しかし、1年余分にやった結果はちゃんと出てくれたなと感じます。駿台のSXクラスでライバルとの高め合いができたことは必ずプラスに働いたはずです。

以下では、各科目での簡単な感想を記します。

国語

点数:47→51

国語(特に現代文)はもともと得意でした。そのため現役時から点数が高かったです。

また、駿台の現代文は役に立ちません。授業もほとんど切っていました。

その理由は、現代文は講師の指導方法や解法が自分には合わないと判断したからです。

予備校は義務教育ではありません。また全てが優れた授業ということはありません。自分にとっていいと思ったものをひたすらに吸収しましょう。

結果、合格できればなんだって良いのです。

英語

点数:67→73

自己採点よりも10点くらい低い点数となってしまいました。その原因としては、要約や和訳、英作文で甘い箇所があったからだと思います。

このように、自分の中での評価と東大教授の評価にズレは生じます。

4Aの文法やリスニング、5の記号問題などを得点源にできれば、70点のラインには乗るのではないでしょうか。個人的には残念な結果でした。

駿台の英語の先生方(大島師・勝田師・竹富師)は面白い授業が多いです。特に勝田師の英作文の授業は前期も後期も非常に秀逸です。

どんなことがあれ、合格できればなんだって良いのです。

数学

点数:48→84

数学で点数を取れたのが合格の要因です。

逆に言えば、数学で48点しか取れなかったのが不合格の要因です。

この伸びは前期の基礎固め〜直前の集中的な過去問対策の結果に尽きると思います。

駿台の数学の先生方(雲師・小林師・森師・石川師・長崎師)は非常に質が高く、全ての授業が楽しかったです。

一年を通して、数学を頑張るモチベーションになりました。

感謝していますし、大学を卒業した今でもまた授業を受けてみたいと思える経験でした。

物理

点数:41→33

言い訳はできません。得意だからといって、当日に点数が出るとは限らないのです。これも受験です。

得意だから、逆に焦りました。第二問の電磁気で雪崩式に間違えを重ねてしまいました。化学が苦手だから化学に時間を回さないと、という意識が若干不利に働いたはずです。

駿台の物理の授業(森下師・小倉師)も非常に高品質で、全ての授業が楽しかったと言えます。

化学

点数:27→47

奇跡の20点アップです。苦手だからといって、当日に点数が出ないとは限らないのです。これも受験です。

物理が60分くらいで終わったので、化学はかなり時間の余裕を持って臨めました。得点アップはこの時間の余裕によるところが大きいです。

また、化学の中でも苦手なところがあまり出ず、私にとってはいいセットでした。

仕方がないことですが、苦手の科目ほどセットの内容には左右されます。

駿台の化学の授業(中村師・吉田師)はとても原理的かつ明快で、楽しいです。化学の苦手意識は最後まで払拭できませんでしたが、問題は解けるようになっていました。

駿台で浪人するなら

駿台での浪人生活で、思い出に残っていて、かつ後学にも役立ちそうな情報を提供します。あくまで私個人の体験に基づくものです。

参考書

特に思い出に残っている参考書は以下の通りです。

数学ばかりですが、もし参考書選びに悩んでいるなら、ぜひ参考にして欲しいです。

参考書 感想
微積分/基礎の極意 最高です。楽しい。
微積分の分野をマスターできます。
絶対やろう。
マスター・オブ・整数 整数への苦手意識が消え、
むしろ得意になりました。
新数学演習 スタンダードではない、難しい版のやつ。
複素数が得意になりました。秋〜冬に。
鉄緑会 東大数学問題集 30年分の分厚いやつ。
これを使って過去問演習しました。
解き方や解説が非常に充実しています。
12月〜直前期まで愛用。
解法の突破口 シンプルに楽しい。
春〜初夏に。
よくばり英作文 短い英文法を頭にたたき込んだ。
春〜初夏に。
灘高キムタツの東大英語リスニング 主に電車の中で。
1年中コツコツやった。
新・物理入門問題演習 「新・物理入門」と合わせて。
夏ごろに。
化学重要問題集 簡単な問題を落とさないようにした。
夏〜秋に。

物理、化学は駿台のプリントやテキストをたくさんやっていて、市販の参考書はあまりやりませんでした。

英語はこれといって聖域扱いされている参考書はないと思います。

理系受験生なら、とにかく数学です。

楽しいこと

気分転換もある程度は必須です。

気分転換 感想
野球観戦 駿台三号館と東京ドームが近いので、時々。
カラオケ 寮の近くで、時間を決めて。
バッティングセンター 寮の近くで、時間を決めて。
美容院 寮の近くで、前髪を無くす覚悟で。

浪人生にも人権はありますが、自由はありません。

時間を決めて、必要な時に必要な分だけ気分転換しましょう

音楽

ミュージック 感想
灘高キムタツの東大英語リスニング リスニング音源はもはや音楽。
WINDING ROAD 絢香×コブクロ / 心が辛いときに聞いた。
何度でも ドリカム / 心が辛いときに聞いた。
栄光の架け橋 ゆず / 心が辛いときに聞いた。
少年 福山 雅治 / 心が辛いときに聞いた。

電車での移動中は基本的にリスニングです。英語を脳に叩き込みます。

食事

御茶ノ水の飲食店で、駿台の授業の昼休みに行ける範囲のお店を紹介します。

店舗 感想
吉野家 足繁く通った。
三浦のハンバーグ コスパ最強のハンバーグ。種類豊富。
豚野郎 三浦のハンバーグの1つ上の階。豚丼。
三田製麺所 初めて行ったとき、
東京にはこんなに美味しいつけ麺があるのかと感動した。

今となっては全てが懐かしい。

第一志望は、ゆずれない。